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第27話《はじめて》

翌日…放課後。 今日は久弥から生徒会室へ来るようにと、手紙が入っていた。 密かに会えそうな場所を色々久弥は探してくれる。 お互いの為、公には出来ない付き合いだから。 生徒会室。 よく先生や生徒会の人が会議で使う部屋だ…広くて長机と椅子が綺麗に並べてある。 満はひとつの椅子に座って机にふせる…。 昨日、祖父の罰を受けてレポート写しをやらされて…終わったのが十二時半、それから食事入浴や宿題をして…結局、寝れたのは三時半をまわった頃で、睡眠時間が三時間もなかったのだ。 授業中に眠るわけにもいかず。 今、とてつもなく眠たい満。 でも、久弥にこれから会うのだから、寝てしまう訳にもいかない。 冷たい机で頭を冷やしてそっと頭を上げ、頭を振る満。 そうしていると…いつもより早く久弥はやってくる。 戸を開ける音で気付いて振り返る。 「ミツル…ごめん、待たせて」 久弥は戸を閉めて、いつものように声をかける。 「…いえ、それほど待っていないから」 微かに首を振り満が答えると、ヒサヤは眉をひそめ。 「どうした?顔色が悪い…昨日あれから何かあった?心配していたんだ」 申し訳なさそうに久弥は満の隣に座って言う。 「…、少し…眠いだけ…」 満はそっと首を横に振って答える。 久弥に心配してもらえて、申し訳ないような…嬉しいような柔らかい気持ちになる満。 「…大丈夫?昨日のことを思い出して眠れなかった?」 そっと肩を抱き寄せ…耳元で囁く久弥。 「…ヒサヤ」 それは理由としては違ったけど、久弥のささやきにドキッとして、顔を紅らめる。 その唇へ…そっとキスをする久弥。 満は…久弥に頭を預け、優しい口づけを受け入れる。 柔らかい久弥の唇の感触は…心地よくて、瞳を閉じたせいもあったのか、一気に睡魔に押されて意識を保てず、満はそのまま眠りに入ってしまう。 「…ミツル?」 その様子に気付いて、久弥は満を抱き支えながら、呼んでみる。 「……」 すでに熟睡してしまっている満。 答える事はできない。 「ミツル!?」 急に反応しなくなった満に驚く久弥。 「……」 「……。はぁ、良かった。眠っているだけか…」 一瞬、ヒヤっとしたけれど、じっと満を見て眠っている事がわかると、大きく息をつく久弥、安堵の息だ。 「…そんなに眠たかったのか。それなのに…」 ちゃんと待っていてくれた。自分に逢う為に。 その満の気持ちが嬉しい久弥。 自分を一番に考えて見てくれているという証だから…。 「…でも、無理はよくないな、ミツル」 嬉しいけど複雑な心境。 久弥は、小柄な満の身体を抱きかかえ、生徒会室を出て保健室へと移動する。 満をベッドへ寝させる為に。 当然、人目は気になったが、座ったまま寝させることが忍びなかったから… でも、こんな所を他の生徒に見られたら。 不安だけど、その時は、その時で言い訳を考えればいいこと…そう考えて。 保健室までは、遠くない部活活動中なので、廊下を通る生徒もいなく、運よく誰にも会わずに保健室へたどり着く。 「失礼します…」 器用に満を腕に抱えたまま、保健室に入る久弥。 「あらあら、どうしたのかしら…」 かなり年配の女校医が、帰り支度をしながら声をかけてくる。 「貧血を起こした生徒がいたので…連れてきました、少し休ませてもよろしいですか?」 簡単に嘘をついて久弥はひとつのベッドに満を寝させる。

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