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第40話

「どのような育て方をされたのか判りませんが、自分の立場もかえりみず、人のものに手を出すなんて非常識も極まりない!」 祥子は勢いのまま続ける。 「本当なら、すぐにでも学校に訴え出てもよい所ですが、卒業前のこの時期に波風立てるのも不本意ですし、そちらもお困りになるでしょ?」 お得意の早口で、満の父を丸めこもうとする祥子だが。 「……」 父は差し出された写真をまじまじと見つめ、そして、ぼそっと言葉を紡ぐ。 「…ふ、馬鹿馬鹿しい」 軽く鼻で笑う。 「…えっ!?」 祥子は、予想していた反応とかけ離れていたので、一瞬言葉を詰まらせる。 「お前の言い分では、ミツルがすべて悪いような言い方だが、この写真を見るかぎり、この彼もミツルに無理矢理付き合わされている様子ではない」 確信したように父は静かに言う。 「父さん…」 まさか、厳しい父が自分を庇うような事を言うなど、思いもよらなくて驚く満。 「星波祥子と言ったか。威勢よく、ここに怒鳴り込む前に、自分の彼氏と話しをつけてくるのが先ではないのか?案外、茶番はお前だろう。自分を過信しすぎるな」 キツい口調で、父は祥子に言い返す。 「っ…信じられない!反省させようって気はないの?息子が息子なら、父親も父親だわッ!」 当初の目的が果たせないことに怒り、口調をあらげる祥子。 「…なんと言われようと、私は私だ。もうこれ以上、話すことはない。帰ってくれ」 満の父は憮然とした態度で祥子を追い払う。 「ッ…わかったわ!失礼しましたッ!」 フン、といった感じで、祥子は言葉を出して、部屋を後にしようとする。 満にすれ違い様… 「おぼえてなさいよ!」 きつく睨み付けて相変わらずの態度で帰っていく祥子だった。 しばし、呆然としてしまう満。 父親に、どう切り出そうか悩んでいると、沈黙を破ったのは父だった。やはり怒っているのか目つきは厳しい。 「…ミツル、座りなさい」 「…はい」 何を言われるのか…恐かったが、おとなしく言われた通り横の椅子に座る。 「……、どういうことか、説明しなさい」 静かな問い掛け。 「……迷惑をかけて、すみません。お父さん」 満はまず祥子のことを謝る。 「……」 どうしても、満の口から答えを聞きたく思い黙って待つ父。 今更、隠したところで、無意味なので、心を決めて父に本当の気持ちを打ち明ける満。 「僕は、日種ヒサヤが好きです。ヒサヤとは半年以上、隠れながら付き合っていました」 開き直る満を見て… 「……、お前が反抗をはじめるきっかけになったのは、その男のせいか?」 ため息をつくように言葉を出す父。 「……違います」 久弥のせいだと思われたくなくて、そう答える満。 またひとつ溜め息をついて、父は言葉を続ける。 「お前は健次と違い、何の問題もなく、跡取りとして育っていた。これ以上、期待を裏切るような真似はするな」 「問題なく?違います、僕は」 父の期待に添えない自分。 でも、以前の自分に戻るつもりはない… もう、ひとりになりたくはないから…

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