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第42話
次の日も、いつも通り満は学校に行く。
やはり、昨日の余韻か、殴られ痕が目立つのか、クラスの人たちの視線が痛かった。
昼までは、それでも何事もなく、久弥とも逢う機会もなく過ぎていた。
しかし、平穏は、やはりあの女の登場で壊されることになる。
昼休みに入り食事を取るため、今日はじめて教室から出た満に、後ろから声がかかる。
「ちょっといいかしら?楠木ミツル」
挑発したような態度の、星波祥子だ。
「……」
満は、あまり関わりたくなくて、祥子を無視して食堂の方へ行こうとする。
「待ちなさいよ、この約束、私が行ってもいいのかしら?」
祥子は片手に紙切れを一枚ちらつかせて満を止める。
「っ…」
満はそれが久弥からの手紙だとすぐに分かって祥子からパッと奪い取る。
祥子はそんな満を鼻で笑い、言葉をだす。
「ヒサヤ、少し私が目を離すとこんなものを書いてあなたの下駄箱へ入れているんですもの、呆れるわ。でも所詮、あなたなんか遊びでしかないんだから、今日証明してあげるわ!」
まるで子供を諌めるように溜め息をついたあと、またいつもの口調で満に挑発的に言葉をなげる祥子。
満はそれを言葉半分にきいて、久弥の字で書かれた手紙をみる。
昨日、祥子との事があって逢う約束をたがえてしまったから。
久弥の手紙には、こう書かれている。
『ミツルへ、昨日はどうして来なかった?何かあった?至急会いたい、昼休み会えるようなら焼却炉裏で待っていてほしい。久弥』
久弥には昨日の朝から会っていない。
実際は一日と少し会えなかっただけなのだけど。
満には凄く長い時間会えていないような錯覚さえ起こしてしまう。
それほど、この祥子が与える圧力が強いのだ。
久弥にせっかく会えるチャンスなのに…祥子が居ては会う事ができない。
「……」
満は悲しみに沈黙していると。
「なにをしているの?ヒサヤに会うんでしょう?行くわよ!」
突然、そう顎で指すように言って祥子は歩きだす。
「え…」
祥子の言動についていけず、満は驚いて止まっていると。
「早くしなさいよ!」
叱るように満を睨んで怒鳴る祥子。
「……」
どうやら久弥の指定した場所に向かっているらしい祥子。
満は困惑したけれど満も来なければ許さないというような態度の祥子。
仕方なく黙って後をついていく満。
頭の中が混乱して冷静に考える事が出来ない。
久弥に逢える。
けれど、祥子がいて…何を言われるのか、久弥の反応も恐くて。
満は沈黙したままだが、祥子は構わず話し掛けてくる。
「顔、どうしたのかしら?あの、腹の立つあなたの父親にでも殴られた?」
満の顔についたキズを見て、クスっと笑いながら聞く。
嫌味な言い方だったが、それも当たっているので言い返すことは出来ない満。
「私を追い返したあと、きっちり叱ってもらえたみたいで安心したわ。常識はあるみたいね、あなたの父親」
フフンと鼻で笑って続けて話す祥子。
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