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第47話

(諦めるなんて出来ない。こんなところで諦めれるなら、はじめから久弥と付き合い続けたりしていない!) 絶対あきらめない――。 満はそう強く思って、両腕を抑えつけている二人のうちの右側にいる男子の腕に噛み付く。 「痛てェッ!」 噛まれた男子は余りの痛さに声を上げ、抑える手を緩める。 「ッ!」 怯んだ隙を逃さず、素早く満は自由になった右肘で相手を後へはじき飛ばす。 そして流れるように両足を抑え付けている男子の衿元を右手で掴むと力任せに引き寄せ、起き上がりざまに強烈な頭突きをかます。 「ぅッ!」 その隙に、解放された右足でそいつを蹴り飛ばす。 残るは左腕を拘束している男子。 満は起き上がりながらそいつを睨み素早く攻撃をしかける。 「……うわッ」 目にもとまらぬ速さで攻撃をしかけてくる満に、恐ろしくなった男子は、脇に持っていたカバンで咄嗟に殴りかかる。 満はそれを右腕で受け、勢いよく払いのける。 「痛ッ!」 その瞬間、満の右手から腕にかけて痛みが走る、カバンを受けとめた時、金具に右手の小指の爪がひっかかり、爪が半分ほど剥がれかけてしまったのだ。 一瞬、痛みで攻撃が止まる満に、チャンスとばかりに―― 「このっ」 男子は満の左腕を掴んだまま、もう一度カバンを振り上げるが。 ミツルはケガをした手で拳をつくり、素早く男子のみぞおちへヒットさせ、その相手も足蹴りで手加減なしに吹っ飛ばす。 「おー。凄いなお前、祥子さんから強いとは聞いていたけれど、お前の強さは半端じゃねぇ」 ミツルが暴れ出してすぐ身を引いて、被害に合わないよう遠目から見物していたリーダー格の男が余裕の笑みを浮かべて言葉を出す。 満は一分もかからず素早い動きで三人の男子からの拘束を抜けて出たのだ。 思わぬ反撃にあった三人。 一人は完全に意識をなくして倒れている。 あとの二人もやっと起き上がれるくらいのダメージを満から頂いていた。 立ち上がり、右手を一度振って痛みを飛ばしながら男子たちを睨む満を遠巻きにみる五人。 一人ダウンしているからと言って、相変わらず人数では圧倒的不利だ。 「そんな小柄な身体のどこに力が隠されてるのか不思議だな、宮下も失敗した訳だ」 なおも笑っていう男。 「……」 宮下。 その名前には聞き覚えがあった。 かなり前に、罰ゲームだといって満の裸の写真を撮らせろと言ってきた空手部の宮下。 「……まさか」 満はハッとして目の前に立つ奴を見る。 まさか、あのころから祥子に目をつけられていたのだろうか。 「……ふ。宮下は使えない奴だったが俺は違う。どんな手を使ってでも」 意味深に笑って、サバイバルナイフを満の前にかざす。 「……」 動いたせいで切り刻まれていた服の袖がずりおちそうだったので、満は袖を破り取って頬の傷から流れてくる血を拭い、挑発する奴に向かって怯むことなく構える。 「……報酬は絶対に頂く!」 そう声を出して、ナイフで満に勢いよく切りかかる。 「ッ!」 満は素早く避けながら周りを見て、カメラを持っている男子に突進する。 「っ、うわ!」 さっきの満を見ていた男子は、カメラを持ったまま慌てて逃げ出す。 「絶対渡すなッ!」 リーダー格の男は満の後を追いながら怒鳴る。 他の奴らは、満には敵わないと思ったのか、ただその様子を見て狼狽えているだけだ。 「来るなッ!」 全力疾走する男子だが、満の方がどうやら俊足らしく、逃げる男子の服を捕らえる。 「カメラを渡せっ」 満はそう声を出して、男子を蹴り飛ばそうとする。 「ッ!」 追い詰められた男子は満の頭めがけてカメラを打ち付ける。 ガッ――。 額の辺りに衝撃を受けて、満の身体は電池が切れた玩具のように動きを止め、その場に倒れ込み、そのまま意識を失ってしまう。 「馬鹿野郎!カメラがイカれたらどうするんだ!」 満を抑えながら怒鳴るリーダー格の男。 「でもなぁ」 言い返そうとする男子。

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