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第48話

「おい待てよ、大丈夫なのかよ……こいつ」 遠巻きに見ていた男子がピクリとも動かない満に懐中電灯の光りを当てて呟く。 明かりに照らされた満は、完全に意識を失い… さっきのカメラで打たれた額からは鮮血が、多量に流れ出ており、神社の土の上に血だまりを作っている。 「生きてんるだろーな……」 もう一人の男子も言葉を出す。 薄暗い神社の境内、異様な静けさが漂い。 「お、俺、知らねえからな」 堪らなく恐くなった一人が、そう呟いて後退り、逃げ出していく。 「俺も……」 「あぁ」 後の二人も次々に声を出して逃げ出す。 「おいッ!待て!」 遠巻きにみていた三人は、関わりきれないと、足早に立ち去ってしまった。 残ったのはリーダー格の男とカメラを持っている男子、そしてはじめに気絶した男子三人だ。 「馬鹿野郎どもが!」 そう憤慨するリーダー格の男に。 「ど、どうしたらいいんだ」 満を殴った男子はかなり狼狽えて声を出す。 「よく見ろ、血はすげーが気ィ失ってるだけだ!お前は写真とれよ!」 リーダー格の男はかなり怒って怒鳴る。 「……っ」 男子は息を呑みリーダー格の男の言うとおりカメラを構える。 「気絶している間に、こいつを裸にして写真撮ったらすぐにズラかるぞッ!」 リーダー格の男は、そう言うと満の服を手で引き裂き、剥ぎ取り、ズボンも下着もナイフで裂いて脱がしていく。 「オイ!早く写真を撮れ!」 「っフラッシュが……」 撮ろうとしても、さっきの衝撃でカメラのフラッシュがたかれなくなっていた。 「なんだと?だから言ったんだッ!」 怒りながら満から離れ、カメラの様子をみるリーダー格の男。 満は、その間になんとか意識を回復させる。 「……っ」 頭がズキズキ傷む。 出血に気付き横になったまま傷口を抑え止血するが…。 「ッ!?」 身体に触ってみて自分の今の姿に驚愕する満。 服は上下とも脱がされ、ほぼ全裸状態だったからだ。 気を失っている間に何かされていないか、この姿を写真におさめられているのでは、と不安になる満。 なんとか起きてカメラを奪わなくては…… そう思うが、さっき殴られた衝撃でかなりダメージを受けた身体、今直ぐ乱闘するのはつらい状態……。 でも、このまま奴らを逃がしたら、それこそ取り返しのつかないことになる。 これまで我慢してきたことが、すべて無駄になってしまう。 そう心を震わせて、今にも力の抜けそうな手に拳をつくる。 奴らは自分が気絶していると思い込んでいて、かなり無防備だ。 卑怯だとは思ったが、不意打ちをしかけることにする。 怪我を負っている満。 そうでもしないかぎり刃物を持つリーダー格の男に太刀打ちできないと思ったから。 狙うは一点。 反撃されたら、今の自分では避けきれないから。 一度で相手を落とさなければならない。 必ず急所にヒットさせないと――。 満も必死になってカメラを奪い取ろうとその一瞬を待つ。 「……チッ、ダメだな。写るかわからねーが、電灯の下の少しでも明るい場所で撮るしかねぇ」 ぼそっと呟いて、リーダー格の男子が満の方に振り返った一瞬。 満は動いた。 素早く起き上がり、目にも止まらぬ速さで脇へ飛び込み、勢いをつけて肘打ちを額にかまし、相手がよろめいた隙に、みぞおちへ根限りの力を込めて膝蹴りを入れる。 「痛ッ!?くッ!」 リーダー格の男はいきなりの攻撃に構える暇もなく膝を折り蹲る。 そして満は、相手が態勢を立て直す前に、仕上げの回し蹴りを側頭部へクリーンヒットさせる。 「ぐッ……」 くぐもった声で呻いてリーダー格の男はその場に崩れ落ちる。 「……はぁ、はぁ…っ」 満も血の出すぎで貧血気味になり、息をきらしながら残るひとりへと瞳を向ける。 「ヒッ……」 カメラを持つ男子は、その光景を目のあたりにしてビクッと身体を硬直させる。 「……カメラを」 満は頭部から滴る血を素手で拭いながら擦れた声を出す。

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