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第51話
「ごめん、カッコつけても、本当は自分の気持ち、我慢できないんだ」
満の熱に触れて言葉を零す。
「ミツルと居たい。このまま帰すことなんか、俺には、出来ないから。家の者には会わせないようにする。だから今日、家に来てくれるよな?」
抱きしめた腕を緩めながら、顔を寄せ、瞳を交わして聞く久弥。
「……うん」
久弥に熱い気持ちで必要とされては、断ることなんか出来ない。
浅く頷いて唇を交わす二人。
久弥はボロボロになっている満を支え、暗い夜道を帰っていく。
自宅の近くには祥子の家がある。
久弥はわざわざ遠回りをして、祥子の家の前を避けて通る。
そして自分の家の前まできて…。
「ミツル、少しだけ待って」
玄関の外で満を待たせて、久弥は先に中へ入っていく。
いつも迎えてくれる家政婦は夜遅い為、もう帰ってしまったので、そのまま部屋にいる母親に戻ったことだけ伝える。
満のことは隠して。
そして満の元に戻ってきて久弥は…
「今日、父さんは宿直で、母さんしかいない。母さんももう自室に戻ってるから安心して」
満を誰もいない玄関へ招き入れ、母親に見つからないように、自室のある二階へと階段をのぼる。
かなり広い屋敷な久弥の家、誰もいないといわれても緊張してしまう。
「そこに座って」
部屋に入り、そう微笑む久弥。
「う、うん……」
「顔、酷く傷つけられたな。風呂、二階にあるから、入ろうか。服貸すから」
何気に言う久弥。
「もちろん一緒に」
と付け足して囁く。
「えっ……」
戸惑うように声を出す満。
「いけないかな?」
久弥は満の隣に来て…優しく問うように囁く。
「…ううん、いく」
慣れない場所で、まだ少し緊張している満だけれど…、久弥をひとりじめできる数少ない時だから、久弥の言葉を受け入れる…
「よかった…ミツル、あの場所で…俺が勝手に呼び出した六時から待っていたのか?」
ベットサイドにふたり寄り添うように座りながらヒサヤは聞いてしまう…。
反省は出来るかぎりしないと気が済まないヒサヤ…
「…うん、ヒサヤに逢えると思ったから…」
ぽつりと答える満。
久弥は…そんな健気な満の言葉に胸が締めつけられる。
純粋に…俺を信じてくれる満…
それに比べ、流されてばかりいる自分が情けなくて仕方がなくなる久弥…
「ごめん…時間どおり行けなくて、待たせてごめん…」
久弥は謝るしか出来ない…
「…こうして来てくれたから…もう、謝らないで、わかってるから…」
すべて祥子が仕組んだコト…
ハードルの高い恋愛だということは…
最初からわかっていることだから…
満の言葉を聞いて…何も言えずその傷だらけの身体を、そっと抱きしめる久弥だった。
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