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流れゆく日々 21
朝、静流が目覚めると紫苑の姿はない。
バイトである。
その事実を思い出すと、静流はまた少し不機嫌になった。
と、電話のベル。
「もしもし…」
相手はキミオイケダ。池田氏である。
『あ、静流ちゃん?イケダです、おはよぉ♪紫苑ちゃんいる?』
朝からのハイテンションに少々辟易しつつも、一応のアイソをしながらバイトだと答える。
『バイト、ですってぇ~~~?!』
受話器から池田氏が出て来そうな勢い。
静流は一気に目が覚めた。
『…んもう、こっちの仕事は一杯依頼が入ってくるって言うのに…』
ブツブツぼやく池田に静流は何となく謝ってみる。
「せっかく先生のお蔭で仕事貰えてるのに申し訳ありません。こないだもバイトなんかよりモデルの仕事ちゃんとやれって僕からも言ったんですが…」
『あらぁ…紫苑ちゃん怒ったでしょ。紫苑ちゃんが雑誌のインタビュー一切受けないとかプロフィール公開しないのって、静流ちゃんのためなのよ』
なんでだ!!
静流は納得行かない。
が、聞く前に池田が次々と話してくれた。
紫苑のことがいろいろ知られるといずれ静流の存在や関係も知られる事になる、そうなると静流を傷つける事にもなりかねない。だから池田のショーとポスターの仕事以外は受けない、と言っているらしい。
インタビューは、喋るとつい静流の事を自慢したくなるから受けないのだそうだ。
「え…今なんて…」
愕然とする紫苑。
目の前にいるのは、先日本屋で再会してしまった初恋の人、あっきー。
「正直お前が、こんなに魅力的に成長するとは思ってなかった。あのころは紫雲の弟としてしか接する事が出来なかったけど…今は、一人の男として、付き合いたいと思ってる」
紫苑はパニックに陥っていた。
何が起こっているのか分からないが、とりあえずキレていた。
「ふっ…ふざけん」
「勝手なこと言ってるのは良く分かってるよ、あの頃の紫苑の気持ちも知っていながら…。返事は急がないから、良く考えて決めてくれ」
「どうしたの紫苑。もしかして、まさかと思うけど落ちこんでる?」
撮影の合間では溜息ばかりの紫苑に、忍が声をかける。
「なぁ忍って…その…相手が自分の手の中にあるか、とかそーいう不安持ったことある?」
「ないね」
忍はきっぱりと即答した。
それだけでなく、逆に相手が自分にラブラブだとわかりすぎると、安心しきってしまう、ときめきもなくなるとそうのたまった。
紫苑はその話を聞いているうちにだんだん不安になってきた。
もしかして静流もそんな風に思っていないだろうか。
あまりに愛情を注ぎすぎているのでは…???
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