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流れゆく日々 24

「待ってたぞ。結論はとっくに出てんだ」  数日後。 例の件の返事を聞きに、あっきーが再び本屋に現れた。 「それで?」 「俺には高校ん時から付き合ってる愛しのハニーがいるんだ!だいたいこの俺が一人身のワケねーだろ!だからあっきーとは付き合わねー!!」  自分にも納得させるよう、そして決心が揺らがぬよう、一気にがなりたてた。 「そうか…残念だよ。もし…紫苑が今一人だったら、俺と付き合った―――?」 「―――多分」 「紫苑っ」 それから暫くして、今度はその愛しのハニーが登場した。 「しず、なんで…?」 「お弁当。いっつもコンビニなんだろ?」 「んもーーーっしずしずラブラブ――っっ」 精算を待つ客など目に入らない様子で静流を抱きしめる紫苑であった。  静流の弁当で心もお腹も満たされた紫苑は、上機嫌で次の仕事場――スタジオへ向かった。 「はよーッス」 いつも以上にノーテンキな挨拶を忍に投げかけると、振り返った忍は無言で涙を流していた。 なんでも、彼女に振られたとか。 他に好きな子が出来たらしい。 「なんだよそれ…」 紫苑が批判的な色を込めて言い返そうとすると、忍は自分が悪かった、と言う。 「ボクは彼女を愛する事に手を抜きすぎてたんだ…他の奴に持ってかれたって文句言えないよ」 ぐったりとうなだれる忍。 こないだはあんなことを言っていた忍も、やはり彼女の事を愛していたのだ。  紫苑はそんな忍を見て、同情を禁じ得なかった。 反面、忍の忠告通りに振舞っていたらいつか自分も…という怖さも噛み締めていた。 「よし!仕事終わったら飲みに行こーぜ!」 不器用な紫苑の精一杯の慰め。  夜。静流は仕事を終え、帰路についている。 おなかへったな、紫苑が帰ってくるまでに何か作ろう―――そんなことを考えながら。  と、前を歩いていた人が財布を落とした。 本人は全く気づいていないらしい。 静流は慌てて財布を拾い、声をかけた。 「すみません、この財布、落とされましたよ?」 「ああ、本当だ!助かりました、今全財産その中に入ってて…」 振り返った好青年はとてもありがたそうに礼を言った。そして、ノーと言わせない強引さでこう続けた。 「お礼にお茶でもおごらせてください!」 「いや、でも…」 「お願いします!!」 「……」  近くの喫茶店で向かい合う、静流と初対面の男。 男は嬉しそうにただニコニコしている。 (新種のナンパだったのかなぁ…?) 静流は正面から見つめられて目のやり場が無く、ただ俯いていた。 男はニコニコしながらも鋭い瞳で静流を見据えている。 ―――こんなキレイな顔して、あんなスゲーことやってたとはね―――  思いついたように男が口を開いた。 「いやぁそれにしても助かりました、この財布には本当に大事な物がたくさん…」 そう言って財布を開いた途端、中の小銭が床に散らばった。 「ご、ごめん、そっちにも転がっった…」 顔を赤らめて立ちあがる男。 静流はちょっと苦笑しながら、テーブルの下の自分の足元にある小銭を拾った。  テーブルの下に静流が潜った隙に、静流のアイスティーに何かが混入された。

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