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流れゆく日々 32

 部屋のドアを開けるなり、静流が飛び出してきた。 「紫苑!!どこ行ってたの、先生から何度も電話入るし…で何その傷……」  紫苑はちょっと恥ずかしく思いながら、経緯を話した。 「で、そこへかっこよく高杉が登場、あっとゆーまにあっきーをボコボコだよ」 紫苑の話が終わってしばらく無言だった静流は、不意に紫苑を抱きしめた。 「無事で良かった…」 「心配かけてごめんな」  翌朝。 元気に出勤しようとする紫苑を静流が心配そうに見守る。 「心配だよ…」 「大丈夫!心配すんなって。今日は本屋だけだし、すぐ帰ってくるからな」  さて本屋で仕事につき、相変わらず居眠りなどしながら店番をしていると、なんと再び暁が現れたではないか。 しかし、昨日の暁とはまったく違う、包帯やガーゼに覆われた悲惨な姿を呈していた。 「そ、それ、みんな高杉に…?」 笑うまいと、否、笑っているのをバレないように、口を手で覆いながら話す紫苑。 「笑うな。昨日のあいつに会わせろ」 こんなにボコボコにやられた相手に会わせろと、この男は言う。 「ふ、復讐する気か?そんなの絶対不利じゃん…」 「いいから会わせろよ!また痛い目に遭いたいか?」 痛い目も何も、今なら勝てるかも、と思いつつも紫苑は答えた。 「俺知らねーもんあいつの連絡先。しずしか知らねーもん。俺バイト中だし」 「じゃあ直接静流にきこうか」 数分後、二人は店を後にしていた。 「…静流くんから呼び出されたからには、いよいよ乗り換える決心がついたと思ったのに」 昼下がり、ちょっと小洒落たカフェの窓際で、にこやかに頬杖をつく紳士。 「…お邪魔が二人もいるのはどういうコトでしょうね」  紳士の隣に静流、静流の向かいに紫苑、紫苑の隣にあっきーという配置でテーブルを囲む。 さっきの台詞は無論紳士・高杉の発言。 「お怪我の具合はどうですか?…折れてましたか、やっぱり」 暁のギブスを見て可笑しそうに笑った。 横にいる静流は恐怖を覚えた。 「何か話しあんだろ、あっきー」  紫苑が促すと、あっきーは正面の高杉をまっすぐに見据えて、単刀直入に言った。 「俺、あんたに惚れた」

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