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流れゆく日々 33

 しばし、時が止まったかのように誰も動けなかった。 「―――で、僕にどうしろと?」 今度はつまらなそうに高杉が問うた。 「俺と付き合って欲しい」 「残念ですが、僕はこんな人が好みなんですよ」 あっさりと言ってのけ、高杉は静流に寄り添う。 「へぇ…そうだったのか」 ぽつりと静流が呟いた。 「あなたが僕にしたこと、高杉さんが知ったらどう思うかなぁー?」 突如反撃に出た静流。 不敵な笑みを浮かべている。 「ちょっと待てよ、もうそのことは反省したじゃん」 紫苑が制止しようとする。  そう、ここに来るまでには道のりがあった。 紫苑があっきーをつれて部屋に戻ると、静流は烈火の如く怒り狂い、高杉に連絡なんか取ってやるもんかと突っぱねた。 が、あっきーが土下座してまで謝り、必死にすがるその情熱に負けて高杉と連絡を取ったのだった。 「何だよ紫苑、そんな簡単に割り切れることじゃないだろう?!」 「しずの言い方は陰険なんだよ!」 「紫苑は自分がやられたんじゃないからわからないんだよ!」 いつもの痴話ゲンカが始まった。 高杉はひそかに別れてしまえ、と呟いたりしていた。 「結局紫苑、まだあっきーのこと好きなんじゃないの?!」 静流のこの言葉に、ついに紫苑がキレた。 落ち着いた店内の雰囲気をぶち壊すような大きな音をたてて立ちあがり、静流の胸倉をつかむ。 「てめぇ…もっぺん言ってみろ!」 「やめろよ、店の中だぞ」 静流は呆れたように冷たく言い返す。  そのとき、不意に高杉が静流の手を取って立ちあがった。 「行こう、静流くん。見てられませんよ、あなたの幼稚な行動は。どうして愛する人よりそんな鬼畜の方をもつかも理解に苦しみます。あなたのところにいるよりも静流くんを幸せにしますよ」  とんびにあぶらげ、漁夫の利。 静流ももっともだ、という顔で共に去っていってしまった。  しばらく呆然とした後、紫苑の怒りの矛先は残されたあっきーに向かった。 「くっそー、もとはといえばみんなあっきーの…」 しかしあっきーはそんな声は聞こえていないようだ。 「いいなぁ…俺、あの人にだったら何されてもいー」 紫苑も毒気を抜かれてしまった。 「なぁあっきー…高杉のどこに惚れるわけ?俺には何が足りねーの?俺…しずの周りにいるヤツのほとんどには何も感じねーけど、あいつだけは怖いんだよ…簡単にしず持ってかれそうで」 ちょっと弱気になって質問してみたら、こんな返事が即返ってきた。 「そりゃあの人にあってお前にないっつったら…『理性』しかないだろ」 「けどあいつにはなくて俺にはあるモンだっていっぱいあるぞ!高校の時からの思い出だってあるしお互いのこと一番理解してる―――」 「だからガキだって言うんだよお前は」 躍起になる紫苑に冷ややかに言葉を浴びせるあっきー。 「長年の思い出は飽きる原因に、互いを一番理解してるっつう奢りはマンネリや惰性のもとになるんだ。そんな時にそれこそお前と正反対の、大人で紳士なあの人が現れてみろ」 紫苑の不安は倍増しかしなかった。

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