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ゲイカップル、周囲から祝福される

 翌朝、学校で顔を合わせた二人は、暫くの間言葉を失った。 静流はメガネをかけていなかった。道すがら、どうしたどうしたとクラスメイトからも冷やかしの声が浴びせられていた。  一方、紫苑はと言うと、昨日までの肩まで届いた髪がきれいに刈られていた。前髪は多少鬱陶しいままだが、今まで日の光に晒されていなかったうなじだけがやけに白々と眩しい。  暫くの沈黙の後、二人は同じに互いを指差して笑い出した。  そしてひとしきり笑った後、 「本気だってわかったろ」  紫苑が急に真顔になった。ただならぬ雰囲気に、周囲の生徒も注目しだした。 静流は少し困ったが、今の自分の気持ちを正直に伝えるべきだと、口を開いた。 「あの…まだ気持ちが状況についていけなくって、蒼城の気持ちは受け止めたいとは思ようになったんだけど…そっ蒼城?!」 しどろもどろに、しかし懸命に話す静流を見ているうちに、紫苑は思わず静流を抱きしめていた。驚いたのは静流より、周りの生徒達。 「みっみんな見てるよ…!」 真っ赤になって動揺する静流に、紫苑はニッと笑った。 「だから、見せしめ」 そして静流から体はそのままで顔だけ周りの生徒達に向けると、紫苑はハッキリこう宣言した。 「いーかおまえら、これは俺んだぞ。横取りしたら殺すからな!」  周りは一様に口をぽかんと開けて、少し顔を赤らめていた。 仮にも男子校、である。静流と紫苑は世間一般で言うところの『ホモ』とか『ゲイ』とかいうやつになるわけだ。異端者扱い――そうなっても仕方の無いこと、のはずなのに。 「すげぇ…」 「阿川には多いって聞いてたけど…」 「これだけ正々堂々とされると――」 「応援したくなるよな」 思わぬ展開と相成り、 「お前らなら許す!」と、あっという間に公認の仲となってしまった。  紫苑が満足そうに頷いている横で、静流一人が目を白黒させていた。 「ほら、みんな祝福してるぜ、ハニー。堂々としてりゃいんだよ」  静流の肩の力が抜けた。全くしてやられたというしかない展開だが、不思議と悪い気はしなかった。紫苑といれば、今までのように周りの期待を一人で背負うことも、いい子でい続けることも必要無いような気がしていた。 「どこまでおめでたくできてるんだ、君って人は…。でも、ちょっと羨ましいな」 静流は心の底からそう感じて言ったのだが、紫苑には気に触ったようだ。 「それ…バカにしてんのか?」 「え、なんで…」 静流が言い終わらないうちに、紫苑が静流の髪を引っ掴んだ。 「お前それ、『俺がバカでついてけねー』って意味じゃんよ!」 「すぐ手ェ出すんだから蒼城は~~!!」  人々の心には、「ごちそうさま」という文字が浮かんでいた。

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