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君という人は。
放課後。
「ハヤミ、これから広沢の家にメシ食いに行くんだけど、お前も来いよ」
クラスメイトからの誘い。広沢の家は学校からほど近くの中華料理店だ。
行きたいのは山々だったが、紫苑がベッタリくっついていて、実際誘われている時も後ろから睨みをきかせている。
「え、やぁ、僕は…」
紫苑の存在があることに気付いたクラスメートは、紫苑も誘った。
「よ、よかったら蒼城も来ないか」
「なんか1回話してみたかったんだけど近寄りがたくて…」
それを聞いた紫苑の手のひらを返したような態度。
「――ホントに?」
静流の陰から満面の笑みで応じていた。
初めの手紙に、友達が少ないと書いていた紫苑だが、単に周りが紫苑に近付きにくいだけのようだ。
静流のクラスの生徒ばかりの中に、一人だけ違うクラスであるにもかかわらず、話題の中心は紫苑だった。ぼんやりと、静流がそんなことを考えながら紫苑を見ていると、
「あ~~っ、見ろよハヤミがジェラシーの眼差しでこっち見てるよォ!!蒼城の横空けろ!」
そんなヤジまで飛び出す始末。
「しっかし蒼城て本能のままに生きてるなー」
誰かが言った。
「あたりめーよ。周りの目気にしたり自分を作るなんてバカバカしーんだよ」
得意げに言ってのけた紫苑に、静流は唖然とした。
僕が一番していない、できていないことを、蒼城はいつもごく普通にやってるんだ…
「今日はゴメンね、知らない人ばかりの中に…」
帰り、ちょっと申し訳なさそうに、静流は謝った。
「へェ、気遣ってくれてんだ」
日はすでに沈み、夜の帳が下りている。
「でも…僕のほうがビックリしたよ。蒼城て人見知りなんか全然なくて、すぐみんなと仲良くなれて…」
前を歩いていた紫苑が立ち止まり、振り返った。
「鈍いヤローだな、てめーに恥かかせねーためだろ」
鼻に人差し指を突き付けられたことよりも、意外な発言に静流は驚いた。この男は、ただ自由気ままに生きているだけではないのではないか。自分のほうがよっぽど子供なのでは――?
「ごほーびくれよ。ずっとガマンしてたんだぜ」
そう言いながらきゅっと抱きついてくる。
「――今日、寮泊まる?」
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