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からまわりの横恋慕
「C大学の入学式にお越しの方は直行バスに乗ってくださ~い」
駅前で、C大の腕章をつけた男性が、メガホンごしに声を張り上げている。
ここはC大の最寄り駅。コンサートでもあるかのような混雑だ。
「すごい人の数だねぇ…」
ごく普通のスーツ姿の静流とは対照的に、隣にいる紫苑は、まるでファッション雑誌から抜け出たような奇抜な格好をしている。高校に通っているときにはなかったピアス穴が開いていた。
すっごくキマってる、カッコいい。静流は素直にそう思う。
だが、早くも目立っている。すれ違う人が振り返って見る。
漠然と、不安が過る。
周囲が変化しても、外見が変わっても、僕らは何も変わらない――
そう信じては、いるけれど。
入学一ヶ月、わかったこと。
とうとう紫苑が静流の身長を完全に追い越した。
そして…やはり紫苑は異様にモテた。本人は興味なさそうなのが救い。
紫苑が女子に声をかけられるたびに、静流は情けない顔をする。その気持ちを察して、
「心配しなくても俺はしずしずオンリーだからなっ」
静流を引き寄せて頬擦りしていると、
「君らやっぱりそうなん?」
やばい。ここが校内だということを忘れていた。
「なーんかそんなニオイしてたんだよな」
「ほんとにいるんだ…」
「もったいないな!いい男どうしでくっついちゃって」
いろんな反応はあったものの、なんとなくまたしても公認の気配。と、そんなところへ。
「バッカじゃないの?!信じらんない」
嫌悪を剥き出しに吐き捨てる一人の女。
「おい水原、お前ちょっと紫苑のこと好きだからって言い過ぎ!」
周囲が笑いに包まれる。水原と呼ばれたその女は真っ赤になった。
「こんな女の言うことなんか気にせずヨロシクやってくれ!」
水原、完全無視。
翌朝。水原が昨日とは別人のような極上スマイルで二人に歩み寄ってきた。
「紫苑クン!ちょっといいかしら?」
「よくねェ」
水原の言葉が終わらぬうちに紫苑が一言。そして水原の際を足早に通りすぎる。
「ちょっと!いくらホモでもそこまで女に冷たくしなくたっていーんじゃないの?!」
「自分のことバカ呼ばわりした女にやさしくする筋合いねぇちゅうの」
珍しく正論、と笑う静流と共に、二人は仲睦まじく去って行った。
おぼえてろ…私を敵に回したこと、後悔させてくれるわ!!
水原は単なる振られた腹いせに立ち上がった。
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