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第14話

※※※※※※※※※※※※  長い春休みが終わり、 4 月になった。寒さは成りを潜めて、暖かな陽気が人々を包んでいる。  朔と明は 3 年生になった。単位はギリギリだったが。そして、今日もまた、濃厚な朝ごはんの時間のせいで、初日から授業に遅れてしまった。片岡教授の授業の代わりに取った、なんという名前かすっかり忘れてしまったが、新しい准教授が来る授業だった。 「あれ?教室違うみたいだよ」 「ふぁ…どこ?」 「405だって」 「…どこだ」 「ほら、外語で使った教室だよ」  後藤から送られてきたLINEで、教室の場所を確認する。既に15分は遅れているにも関わらず、二人とも足を速めることなく歩いていた。  去年まで同じ授業で使っていた教室と違い、縦に長いその教室は、教壇側に2つ出入り口がある。必然的に学生達から見られる位置にあるため、朔は嫌だなと口角を僅かに下げた。 「サボるか?」  周囲からしたら全く表情の変わらないように見える朔の微妙な変化を敏感に見つけ、明が問いかける。 「ううん、一応、初日だからね」  首を横に振る。そうこうしている内に、教室の前に着いた。  一部窓ガラスになっているドアから教室の内部が見えると、たまたま角度的に見える位置に座っていた後藤が朔と明に気付き、両手を合掌させて小さく口を動かす。多分、「御愁傷様」とか何とか言っている。  意を決して、音があまり鳴らないようにしてドアを開けた。  何人かの学生が朔達を見やる。すると、授業のオリエンテーションをしていたと思われる声が途切れた。教壇に立っている男も朔達を見た。  その瞬間、朔は目を軽く見開いた。明も気づいたようで、後ろから「ん?」と訝しげな声が聞こえた。  ノンフレームの下にあるタレ目が、二人を見ていた。ーー春休み前に中庭でぶつかった吸血鬼だった。

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