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第3章 好きなのかもしれない 1
あれから自分の気持ちをどうにかして確かめる方法はないかと、そればかり考えていた。
そうは思っても良い方法もなかなか見つからないのに、柏木の些細なことは目に付いてしまい今日もまたからかってしまう。
それにしても、何故僕は柏木の些細なことが目に付くのか。
柏木は校則違反の宝庫だからネタには困らないけど、でも他のやつの校則違反なんて見つける気にもならないし指摘をしたこともない。そういった面倒な役回りは元々好きではないのだ。
柏木の場合は反応が面白いからなんとなく指摘し続けてきたけど。
これって思い返してみれば、なんか僕って好きな子いじめる小学生みたいじゃないか、……。
…───って、また自分で思っておきながらハッとした。
だから柏木も男だろう?
気を取り直し購買にでも行こうと教室を出たら、ちょうど柏木が教室に戻ってきた。
そしてまた僕は性懲りもなく、柏木の些細な事に目がいってしまう。
今日の柏木はシャツの下にピンクのTシャツを着ているように見えた。
「シャツの下ってピンクのTシャツ着てるの?」
教室のドアの前ですれ違いざまに話し掛けると、また柏木はいつものように眉間にしわを寄せて僕を睨みつける。
「うるせーな。白じゃないとダメだって言いたいんだろ!? 校則違反って言いたいか。コノヤロー」
また柏木は相変わらずの喧嘩腰だ。
「僕はただピンクのTシャツなのかって聞いただけなんだけど」
「マジでうるせー! これはな母さんが赤いパンツと一緒に洗ったからピンクになっただけで元は白いTシャツなんだからな!」
そう言うとフンッと鼻息を荒くして柏木は自分の席まで戻ると椅子にドカッと腰掛けた。
元々は白のTシャツだからって……いや、だからそれは今、結局ピンクのTシャツってことだろ?
相変わらず喧嘩腰なんだけど、妙に笑えて綻んでしまう。訳の分からない理屈も面白い。
やっぱり柏木といると心が動く気がする。そして和む気もする。
こんな風に笑ったのも久しぶりかもしれない。
やっぱりこれは、好き…───なんだろうか。
まともな恋愛をしたこともないし、ちゃんと人を好きになったこともない僕はその気持ちを確信できずにいた。
しかしそんな心の変化を明確に気づく日は、突如としてやってきたんだ。
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