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3.好きなのかもしれない 2
しばらく柏木をいじる毎日が続いたある土曜日。
特に用事もなかったので家にいると、突然インターホンがなった。
玄関のドアを開けてみると、知らない子が一人表情を強ばらせながら立っている。
「あ、あの、新藤くん……!」
この子、誰だろう?
相手の名前もわからずにいるとその子は震えながら話し始めた。
「わ、私……新藤くんが…す、好きなの。よかったら、付き合ってください」
あ、告白か……。
普通なら喜ぶべきところの筈なんだけど、やっぱり僕の心には何も響かない。
これなら柏木をいじってる方が…───って、また柏木か。
どうやら本格的に柏木が気になってるらしい僕の頭から、一度柏木を離して目の前の女子にちゃんと言ってやらないといけないと口を開く。
「ごめんね。君とは付き合えないから」
こういった告白の返事ははっきり言うべきだと思っている。付き合うつもりがないなら尚更、変に期待を持たせるような言い方はしない。
彼女は震えながら俯いていたけど、そのうち帰るだろうと思い家に入ろうとすれば腕を掴んで引き留められた。
「だ、誰か付き合ってる人いるの?」
「いないけど」
「だったら……」
そうやって目を伏せた彼女に今度は苛々した気持ちがわいてくる。
往生際が悪いというか。
だったらって、何? 付き合っている人がいないなら、じゃあってこと?
どれだけ自分に自信があるんだ? って。
僕にだって一応好みがあるのに自分なら当然範疇に入るとでも思っているのだろうか。
多分その手を振りほどき振り返った僕の視線は冷たかったと思う。
少しきついけどはっきり言わなきゃ駄目みたいだから。面倒くさい。
「────君に全く興味が無いって意味なんだけど」
低く響いた声に驚いたのか、僕の視線のせいなのか、一瞬息を呑んだ彼女は目に涙を一杯溜めながら走っていってしまった。
あーあ、泣かせちゃった。なんて他人事のように軽くため息をつきながらドアノブに手をかける。
でもその時、不意にさっきの告白がもしも柏木だったら……なんてことを想像してしまった。
「好きだから付き合って」って言われる想像をしたけど、すぐに「お前なんか好きじゃないんだからなっ!」って言われる想像にすり替わりまた笑けてくる。
やっぱこっちの方が柏木らしいか……って、あり得なさすぎてまた笑えた。
そして家に入ろうとした時。
「おいっ、新藤!!」
その想像した相手の声が後ろから聞こえてきて、僕は驚きながらドアノブにかけた手を止めた。
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