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3.好きなのかもしれない 5

僕がすぐそばに立ったとき、柏木が僕の存在に気付いたようで顔を上げた。 「な、なんだよ」 「僕はね、好きな人以外とは付き合わない。それにあの子はタイプじゃないし」 「タイプじゃないってあんなに可愛いのに。お前って高望みなのか?」 可愛い? どこが……。 僕のタイプはさ……。 「知りたい?」 「別に知りたかねぇよ」 そう言って視線を外した柏木にどんどん迫るように近付いていく。 近付けば近付くほどに、後退りしながら柏木の表情が困惑していくのがわかった。怯んだような表情はまた新鮮で、いつも見ないような表情を見て自然と顔が綻びまた感情をかき乱される。 「僕の感情をかき乱すのはただ1人だけだよ。そういう感情ってさ、好きってことだと思う?」 「はぁ? そんなの俺が知るかよ。そうなんじゃねぇの?」 柏木は吐き捨てるように言ったけど、僕自身はそこでほぼ90%くらい確信していた。 そして柏木を壁際まで追い詰めて顔を近付ける。 その丸みのある形の良い目がとても好みだと思った。 そして、その瞳が困惑で揺れるのがわかり。 …………ものすごく、キスがしたいと思った。 「そいつとキスでもしたら好きかどうかわかるかな? どう思う?」 「俺が知るか! つか、お前なんだよ! 何で壁際に……」 不機嫌そうに僕のことを睨んだ柏木の肩に手をかける。そっと頬に触れると柏木の体が小さく震えたが、また強い眼差しを僕に向けた。 そんな様子に目を細め、僕は僕自身の疑問に答えを出そうと柏木を壁に押しつける。 そして残りの10%を埋めるため柏木に、 …───キスをした。 しばらく固まっていた柏木だったが、キスされていることに気付くと暴れ始めた。 そして隙を突いて唇を離し逃げようとするから、股の間に足を入れ更に力を込める。 「ふざけんなっ! ……なっ……んっ」 何か言いたそうだけどその言葉ごと唇をふさぎ、隙間から舌を割り入れて柏木の舌を捕まえた。 逃げようとする舌を追いかけて、絡めて軽く吸い上げる。柔らかな感触は僕を夢中にさせた。 「ど、…ンな…んっ……⁉︎」 柏木は抵抗してたけど、止められなかったんだ。自分でもどうしてかわからない。 舌を絡めれば絡めるほど満たされていく。 キスなんて今までに何回もしてきているのにこんな気持ちになったのは初めてだった。 「……んっ」 柏木の舌はとても甘かった……。 こんなにも暖かく感じるキスなんて、不思議だった。 そして、そんなキスが存在するなんて知らなかった。

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