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3.好きなのかもしれない 7

今まで柏木がいつもどうして僕に対し喧嘩腰だったのか気になっていたけど、まさか僕が柏木を嫌いという認識だったとは夢にも思わなかった。 自分自身が自覚したのも今さっきなわけだから、しょうがないと言えばしょうがないけれど、これはこれで少し傷つく。 僕は大きなため息をひとつつくと、柏木の目を真っ直ぐに見た。 すると柏木は身構えながらも必死に僕のことを睨んでいるみたいなのだが、好きだと自覚した途端それすらも可愛くん見えてきてしまうのもどうしたものか。 とりあえず、軽い咳払いをして僕はゆっくりと口を開いた。 「柏木は好きな子をイジめたりしたことないの?」 すると予想通り柏木はきょとんとした顔をしていて、まるで理解出来ていない様子だった。 だからもう一度、同じことを告げる。 「好きな子を、ついイジめちゃったり。そんな経験無い?」 すると今度は理解できたのか、みるみるうちに柏木の顔色が変わっていった。 さっきの怒った顔とはまた違う、焦り顔。 「つまり……なんですか? 俺に対して何かと厳しかったのって好きだからいじめてたってわけ?」 「それ以外に何がある?」 そう言った瞬間の、目を見開いた柏木の顔は今までで一番面白かった。 前から怒った顔以外にも見てみたいと思っていたけど、実際に見てみると予想以上にぐっとくる。 そして柏木の持っている表情を全て見てみたい欲望みたいなのが沸き起こって胸を熱くさせた。 ────それと同時に、独り占めしたいとも思った。 だからこそさっきの子に対する柏木の態度が余計に気に食わなくて少し体を寄せれば。 「おい、新藤! 離れろよ」 壁際に追い込まれ股の間には足を入れているそんな状況下だったことをまた思い出したかのように柏木が暴れ出すので、抑える手に力を入れた。 「柏木はあの子が好きだったわけ?」 「お前に関係ないだろ!」 柏木の声と視線は僕の心をえぐるように動かし鷲掴みにする。 「君は本当にわかりやすいね。僕のことは好きじゃない?」 「当たり前だろ! お前なんか嫌いだ」 人を追いかけたくなる心理というのも、具体的に実感したのは初めてだ。 そして、嫌いだと吐き捨てるように言われたのがスイッチになり、気が付いたら僕はまた柏木にキスをしていた。
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