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第4章 独占欲の強い策士 1
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月曜日。
登校すると昇降口で柏木と土曜日のあの子が喋っていた。
そして同時に柏木の表情を見て、ため息が出る。
なぜなら、土曜日に彼女が僕に振られたことを知っている柏木は、どうにかして彼女に取り入ろうとしてるのが見え見えだったからだ。
本当にどうしようもない奴だ。
彼女は君なんか目に入ってないのに。取り入る価値なんてない子なのに。
苛立った僕は二人に近付いていった。感情は隠して出来るだけにこやかに。
すると、やはり彼女の視線は簡単に柏木をすり抜ける。
「……あ、新藤くん」
ほら、これだ。勿体無いとは思わないか。
この子は君の価値なんかわからない子なんだ。
僕はもっと柏木に近付きたくて、
「────千秋」
と、名前で呼んでみると不思議なもので独占欲が沸々と沸きあがってくる。
千秋は一瞬目を見開いて驚いた顔をしたものの、すぐさま予想通り不機嫌に睨みつけてきた。
彼女との時間を邪魔されたと怒っているのだろう。
でもね、僕だって好きな子が他の人と喋っていたら邪魔したくもなる。
僕が近付くと、嫌そうな顔をして千秋がその場を離れようとした。
「おい、千秋待てよ。これ僕の家に忘れていっただろ?」
スマホを見せつけながら“僕の家”を強調して言ってみる。
だるそうに振り返った千秋だったが、スマホを目にして驚いた顔をした後、“僕の家”で何か思い出したのかほんのりと染まる頬に、少しだけ優越感に浸った。
やっぱり、可愛い。
千秋は僕からスマホをむしり取るようにして掴むとすぐに歩きだそうとした。
すると、そんな千秋を気にすることなく彼女は僕に近付いてくる。
「柏木くんと新藤くんって仲良かったの?」
そう尋ねながら上目遣いで見上げてくる姿を冷ややかに見ながら、千秋がまだこの子の事が好きなら少しだけ利用させてもらおうと思い、得意の笑顔を作った。
「一年から同じクラスで仲いいんだ」
「そうだったんだ……知らなかった」
千秋が呆れた顔でこっちを見ているので少しだけ意地悪をしてやろうと、彼女の肩を引き寄せて内緒話でもするように耳元でこっそり囁く。
「僕は千秋の友達だから、千秋が君のこと好きなのも知ってたんだ。だから、冷たくするしかなくてね……」
そして彼女と目が合うとわざとらしく悲しげに見えるように意識してみる。
すると途端に彼女は真っ赤な顔をして走り去っていった。
都合よく勘違いしてくれたらいいんだけど……と、思いながら彼女の後ろ姿を目で追う僕はやはり性格が良いとは言えない。
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