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4.独占欲の強い策士 2
すると彼女の赤らんだ顔を見た千秋がすごい剣幕で僕に近付いてきた。
「お、おい! 何を言ったんだよ」
「気になる?」
「気になるに決まってるだろ!」
「相変わらずうるさいな」
なんて言って僕が歩き出すと、怒りながら僕の後ろをついてくる。
「待てって! おいっ」
無視してそのまま歩き続けると予想通り腕をつかまれた。
そんな千秋の行動に顔が綻ぶと、そんなに気になるなら教えてあげようとばかりにさっき彼女にしたように千秋の耳元で同じことを囁いた。
「僕は千秋の友達だから、君のことを千秋が好きなのも知ってたんだ。だから冷たくするしかなかったんだよ……って、言ったんだよ」
耳に息がかかると僅かにビクついたのが可愛くて、ついさっきよりも大袈裟に感情込めて言ってしまったけど、千秋もさっきの子と同じようにみるみるうちに顔を赤らめて面白い。
でも千秋は僕のことを振り払うようにするとかぶりを振り、また僕を睨みつける。
「なんだよ! まるでお前もマリエちゃんが好きだけど、俺がいるから諦めたみたいに聞こえるじゃないか!」
「そう聞こえるように言ったんだけど?」
「はぁ? ま、まさか……お前もマリエちゃんが好きだったのか!?」
そんな千秋の言葉に呆れてものも言えない。
千秋はやはりどこか頭が緩い。 僕は千秋が好きだと言ったはずなのに、どうしてそっちの方向に行くのか理解できない。
「本当に君は馬鹿だね。僕が好きなのは千秋だよ」
「千秋って呼ぶんじゃねぇよ。バカなのはテメェだ!」
千秋には一から僕の気持ちを教えてあげなきゃいけないみたいだ。と、僕は軽くため息をついた。
「君を引き止めるには彼女が必要だったから。あぁ言えばきっと彼女は僕に近寄ってくるよね? そうすれば君も僕と関わらなければいけなくなる」
すでに僕は君中心に動いていることに少しでも気付いてくれたらいいのに、また君はあの子のことを心配するんだ。
「なんだよ。マリエちゃんを騙すなんて最低だぞ」
「君も人のこと言える? 振られた心のスキに入ろうとしたくせに」
「うっ……」
きっと、図星なんだろう。
それ以上千秋が反論してくることはなく、僕が歩き出すと少し遅れて千秋も歩き出した。
教室に入り席に着くと、また少し遅れて千秋も入ってくる。
が、しかし……何かを思い立ったかのように、すぐ千秋は教室を出て行ってしまった。
どこに行ったのかは知らないが、少しずつでもいい。千秋が僕に夢中になればいいのに……。
そんなことを思いながら授業を受けていた。
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