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4.独占欲の強い策士 4
あれから、特に僕から千秋に話しかけることはせず、暫く千秋を観察する日々が続いた。
千秋とあの子の関係は微妙なまま継続しているらしい。
たまに学校帰りに一緒に歩いているのを見かけることがあったけど、大概は他の友達も一緒で、それだけで見込みの薄さがうかがい知れるのに、千秋は彼女に好かれようと頑張っていてとても健気に見えた。
──そんな日常の光景を打破するべく千秋が立ち上がったのは、それから暫くしてからのことだった。
ある金曜日の昼休み。
教室を出て行く千秋があまりにも不審な動きをしていたので後を付けてみると、やっぱりあの子の教室に着く。
妙に緊張して強ばっている様子から、何か行動にでるんだと予測しながら見ていると、あの子が教室から出てきた。
少し離れて様子を伺っていたので2人の会話は聞こえないが、まぁ千秋のことだからデートにでも誘っているのだろう。
そしてあのあたふたしている様子から、彼女はなかなか首を縦には振ってくれないらしい。
僕は待ち焦がれていたタイミングに目を細め、千秋の方へと歩いていく。
「千秋」
千秋のことを呼ぶも、あくまで聞こえない振りをするつもりなのか、千秋は振り向こうとはしない。
「何の話してるの?」
それならばと更に近付いて構わず話の輪に入ろうとすれば、千秋ではなく隣にいたその子があっさりと話の内容を教えてくれた。しかもおまけまで付けてくれて。
「あのね、明日か明後日に柏木くんが遊びに行こうって言ってて。そうだ、よかったら新藤くんも一緒に……どうかな?」
その子が無駄に上目遣いで首なんかを傾げたと同時に、俯いていた千秋が青ざめて顔を上げた。
本当に可哀想な千秋。
こんな女なんか、やめればいいのに。
肩を落とす千秋を見ていたら、たまらなくなった。
でも僕も彼女と同じで、したたかだからそこに付け入る。
これは僕が待ち望んでいた展開なのだから最大限に利用しなければ勿体ない。
さぁ、したたかさで言えば僕と彼女と、どちらの方が上手 だろうか。
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