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4.独占欲の強い策士 5

僕も人のことは言えない。わかってるけど、欲しいものは欲しい。 だから、喰い付くように餌をまく。 僕はほんのりと憂いを帯びた目で彼女を見つめた。 「千秋と出かけるの? 僕はお邪魔なんじゃないかな」 すると頬を赤らめた彼女の目に欲が光る。 「3人で出かけようよ。大勢のほうが楽しいよ。なんならさ、遊園地とかにしない? 私、お弁当作ってきてあげるし。柏木くん、いいよね?」 その瞬間千秋がわかりやすく反応した。たぶん、弁当に。 単純すぎてため息しか出ないけど、ここはぐっと堪えて動向を伺った。 千秋は葛藤しながらどうするべきか考えているようで、ぐるぐると目まぐるしく表情が変わっていく。 何を考えているのかもわかりやすすぎて、それはとても可愛くて思わず目を細めてしまった。 きっと千秋にしてみれば、僕が邪魔で仕方ないはず。僕がいなければどんなに良いかと思っているに違いない。 だけどね、千秋。 彼女は、僕が行かないとなると千秋とも出かけないと思うよ。 それを証明するかのように僕は揺さぶりをかけた。 「その日は暇だけど、やっぱり2人の邪魔したくないし。僕は遠慮するよ」 哀愁漂う表情で謝ると、すぐさまつまらなそうな表情をするその子。 「そっか……じゃ、私もやめようかな……」 するとこれが決定打になったのか、千秋はさらに慌てて声を上げた。 「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待った!! 新藤も一緒で……いいよ」 結局千秋は彼女と出かけられる方を選択したらしい。 その途端に彼女の顔も嬉しそうに華やいで、僕は誰にも気付かれないようにニヤリと笑う。 「本当に? じゃ、3人で出かけようよ。どこに行く?」 そうなれば話は早くて、近くの遊園地に行くことが決まった。 時間や待ち合わせ場所なんかも決まって教室に帰る間も千秋は不満そうだけど、僕は嬉しさを噛みしめていた。

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