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5.仕掛けるなら甘い罠 2

そうしていると時計が待ち合わせ時間を指す。 しかし、まだあの子は現れない。 このまま来なくても一向に構わないんだけど、千秋はさっきからそわそわしているようで落ち着かない様子だ。きっと約束の時間になってもやってこない彼女にやきもきしているのだろうけど。 「どうしたの?」 「べ、別に……」 そう言って千秋は僕に悟られまいとそっぽを向く。 「時計ばかり見てる。焦るなよ。まだ、約束の時間から五分しか経ってない。女は用意に時間がかかるから遅れるものだ」 まぁ、すべての女子がそうだとは思っていないが、あの子みたいな子はきっと人を待たせることに対して何も感じないタイプに違いない。寧ろ自分が遅れることによって自分への付加価値が上がると勘違いしているタイプ。 僕は元々時間にはきっちりしたいから、そう言った点でもルーズなあの子はごめんだ。 でも千秋なら、“あなたのためにお洒落していたら遅くなっちゃった”とか言われたらすぐに信じて許してしまうんだろうな。 そんな風に思いながら千秋を見ていると、不機嫌そうな顔をしてまた僕に突っかかってきた。 「偉そうに言ってんじゃねぇよ。女とデートしたことあんのかよ」 「あるけど?」 「え? お前って男が好きなんだろ? なんで女とデートするんだよ!!」 思いもしなかった答えだったのか、驚いたような表情をした千秋に軽くため息をつく。 この際、デートの話はどうでもいい。 僕は男が好きなんじゃなくて千秋が好きなだけなのに、何回言えば伝わるのだろう。 「別に男が好きなわけじゃない。僕は千秋が好きなだけだ」 「俺は男だ」 「わからない人だな。性別関係なく君に惹かれたと言ってるんだ。それに女には困ってない、悪いけどその点では千秋より上級者だよ」 そう言いながら微笑むとさらに不機嫌さを増した顔になる。 そうしているうちに、あの子がやってきた。 「遅れちゃってごめんね。用意に時間がかかっちゃった」 えへっと笑ったとこで可愛くない。 そう言ってやりたいが、千秋に視線をうつすとメロメロといった様子で遅れたことなど既に帳消しのようだった。 やっぱり千秋は女に対して青すぎるな……と思いながら三人で遊園地に向かった。

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