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5.仕掛けるなら甘い罠 3

遊園地では二人乗りの乗り物に乗る組み合わせをジャンケンで決めることになり、千秋をこの子と一緒になんて座らせたくないから参加したわけだけど、千秋があまりにもジャンケンが弱いので僕の計画はほぼうまく進んでいる。 本当はこの子を一人にして千秋と乗りたいとこだけど、今は仕方ないか。 とりあえず笑顔をつくりやり過ごしていると昼になったので、フードエリアで弁当を広げて食べようということになった。 「じゃーん。今日は早起きして作ってみました」 そう言いながら彼女は得意気に弁当を広げ始めた。 が、その弁当を一目みて唖然とする。 まず何といっても揚げ物ばかりで彩りが悪かった。 全体的に茶色い弁当で、せっかくの黄色である卵焼きも焦げているから全体の色味は同じようなものになってしまっている。せめてサニーレタスを敷くとかプチトマトを飾るとかしたらいいのに、と思いながらため息が出そうになるのをぐっと堪えた。 それよりも呆れたことは、見たところ殆ど冷凍食品っぽくて明らかに格好だけの弁当に千秋がばかみたいに喜んでいることだ。 「すげー、うまそう。マリエちゃんきっと良い奥さんになるよ!」 「そうかなぁ。食べよう! おなかペコペコなの」 彼女も褒められてまんざらでもないのだろう。頬を赤らめながら嬉しそうにしている。 「ちょっとトイレ行って来るから先に食べてて!」 千秋がトイレにいくとすぐに彼女は料理を取り分けて僕にくれた。 「新藤くんの口に合えばいいんだけどなぁ〜。嫌いなものとかある?」 「特にないよ」 この子は僕が料理が得意なことを知らないから、これで家庭的なところをアピールできるとでも思っているかもしれない。 が、残念なことにうちには最強の姉がいるわけで、その姉に料理を習ったわけだから僕だって味や見た目に加えて彩りだって重視するのだ。 少しずつ食べみて、やはり殆どのおかずが冷凍食品だった。 冷凍食品が悪いとは全然思わないけど、こうも冷凍食品ばかりだと手作り弁当と言っていいのか疑問に思う。 誰が解凍しても失敗しない冷凍食品のおかず類に焦げた卵焼き、固いおにぎりにときめく男なんているのだろうか? あ、千秋なら……コロッと騙されるのかも。 でもこれなら僕の方が美味しいものを食べさせてあげられるから、比較になって丁度いいかもしれない。 「新藤くん、お茶飲む?」 「いや、いらないよ」 そんな感じで適当に話していると、隣のテーブルに家族連れがやってきた。

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