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5.仕掛けるなら甘い罠 5

─────… 面白くもないコーヒーカップから降りると降り口でスタンプカードと書かれた看板が目に入った。 なんだろうと思いながら近付いてみると、どうやらこの遊園地ではスタンプカードを集めると優先的に乗り物に乗ることが出来るらしい。 園内にあるいくつかあるスタンプブースに行き、そのうちの三カ所でスタンプカード集めれば良いらしいのだが運良くコーヒーカップの近くにそのブースがあった。 「スタンプでも集めとく?」 そう彼女に尋ねると、頷いたので当然のように、 「君はこっちね。僕はあっちに行くから」と地図を見ながら言うと彼女は驚いたように声をあげた。 「え? 一緒に行くんじゃないの?」 予想通りの返事だったけど、僕はわからない振りをして軽く首を傾げる。 「一緒に行くの?」 「だ、だって、せっかく一緒に来てるのに」 「でも、別々に行った方が合理的だろ? ……それより、早くカード欲しくない?」 少し身を屈めて耳元で囁き、わざとらしく笑ってみるとまた彼女は都合のいいストーリーでも頭に描いたのか笑顔でスタンプブースへと向かっていった。 そして彼女を見送り僕も目的のブースへと急ぐ。 ──そして、結果。僕は乗り物が優先的に乗れるカードを二枚手に入れることができた。 何故二枚なのかというと、僕は自分と千秋の分に加え一応彼女のも入れて三枚スタンプカードを貰ってきたのだが、帰ってきた彼女が貰って来たのは二枚だけだったからだ。 「やだ! 私ったらうっかり」 それを指摘すればわざとらしく自分の頭を軽く叩くそぶりを見せたけど、やっぱりそういうところがしたたかで吐き気すらしてくる。 まぁ、人を使って千秋の為にスタンプを集めさせてる僕が言えることじゃないけど。 それに元々、僕と千秋が使うのだから二枚あればいいと思っていたので僕も同じようなものか。 「僕が持っていてあげるよ」 そう言うと彼女は何の疑いもなくカードを手渡してくれた。 そんなことがあってコーヒーカップから帰ってくると、千秋はさっきより表情が明るくなっているような気がして少しホッとした。

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