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5.仕掛けるなら甘い罠 6
その後もいろんなアトラクションをまわり、辺りが暗くなり始めたころおばけ屋敷にいくことになった。
そしてここでも、じゃんけんの弱い千秋は一人で行くことになる。それにしても本当に弱い。
「柏木く~ん頑張ってね」
見送られながら千秋は暗闇に消えていった。
でも、じゃんけんの弱い千秋のお陰で僕がここで彼女とはぐれることができれば、千秋を連れて行くことができる。僕はここがチャンスだと思っていた。
「お次の方どうぞ~」
「新藤くん怖いの平気? 私、超苦手なのぉ」
ここのお化け屋敷は歩いて進むタイプで、彼女はわざとらしく音や光に合わせて震えてみせたり、腕を絡ませて胸を押し付けてきた。その計算高い態度にげんなりしながらも、僕はどうにかはぐれて千秋に追いつこうとそればかり考えていた。
女の子を置いていくなんて最低だと言われるかもしれないが僕には千秋の方が大事だし、それにこの子なら一人でも大丈夫だろう。
しばらく行くとタイミング良く目の前に包帯男が現れた。これは使えるかもしれない。
咄嗟に閃いた僕は、包帯男には悪いが足を引っかけて彼女に向かって転けてもらうことを思いつき、一か八かその足を引っかけた。
「う、うわー」
その瞬間、タイミングよく演出のフラッシュがたかれて包帯男が豪快に転けた瞬間、僕の腕から彼女の手が離れる。
今だ!
一度暗闇に慣れかけていた視界はフラッシュのお陰で暗さが増し、はぐれるには充分だった。
「ひゃぁ、し、新藤くーん?」
「あれ? どこに行った? 暗くて見えないなー」
「えっ、どこ!? 新藤くん!」
「どこにいるの? まいったなー」
なんて探してもいないのにわざとらしく探している振りをしながら先を急ぐ。
古典的な手法だったから上手くいくか心配だったけど、意外にも上手くいって良かった。
やはり神様は僕の味方をしてくれるらしい。
チャンスは今しかない。急いで僕は千秋に追いつくように脇目も振らず歩いていった。
しばらくすると前に一人で歩いている千秋の姿を見つけたので、たまらなくなって後ろから抱きついてしまう。
「うわっ!!」
千秋はかなり驚いたようで声を上げ恐る恐る振り返ったようだったが、僕だとわかった途端に眉間にしわを寄せた。
「何だよ。お前なんでここに居るんだよ」
「僕は千秋と一緒にいたいから」
「答えになってねぇよ。マリエちゃんは?」
相変わらずあの子のことばかりでイライラする気持ちを押し沈め、千秋の手を強く握った。
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