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5.仕掛けるなら甘い罠 8

「そうだね、千秋もみつからないんだ。おかしいね、みんな出口にいるはずなのに」 そう言いながら千秋に視線を移せば、また難しそうな顔をして僕のことを睨んでいた。 電話の相手が誰かも、もちろんわかっているのだろう。 いつの間に番号を交換してんだとか思っているんだろうな。 「千秋にも電話してもらえる? 今日はお開きにしようってさ。うん、ありがとう。たのしかったよ」 最後は無難に社交辞令で閉めて電話を切った。 そして電話を切ると同時に千秋のことを引き寄せる。 「彼女から電話があるから、君も出口にいると言うんだよ。そして、もう帰ろうってな」 「なっ、なんで。そもそも今日は俺とマリエちゃんとのデートだぞ!」 「言うとおりにしないと、この前君が僕の家でしたことを彼女にバラすよ」 千秋は僕を睨みつけて腕を振り払おうとしたがしっかりと掴んだその腕を引き、耳元でそう囁いた。 脅しだと思われたって構わない。 「はぁ? そんなの誰が信じるか」 「彼女は僕の言うことは聞くんじゃない? 残念だね。君の恋は終わりだね」 「…………」 すると千秋はそれ以上言い返してこなかったから、理解したんだと思う。 そうしていると千秋のスマホから着信音が鳴った。 彼女もたいそうがっかりしてることだろうから、そのまま話がまとまるだろう。 案の定、通話を終えがっくりと肩を落としている千秋の様子から僕の思惑通りだと思った。 そして僕は千秋の手を引いて観覧車の入り口にまわるとポケットからパスを見せて係員に誘導されながら別の入り口に入っていく。 「なんだ、何したんだ?」 「ここは前もってスタンプを押してもらえば優先的に乗り物に乗れるシステムあるの知らなかった?」 「そんな裏技があったのか。つか、いつ集めたんだ。スタンプ」 「内緒」 君の愛しいあの子をパシリに使ったなんて言わない方がいいと思うし、黙っていた方がなんとなく面白そうだ。 すると、ゴンドラがやってきて中に乗せられる。 この観覧車は一周が約二十分。 ────この二十分が勝負。

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