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5.仕掛けるなら甘い罠 9

向かい合わせに座り、まずはこの距離をどう縮めるか、そしてどうやって口説こうか考えていると。 「さっきのマフィン。あれ、どこの店のマフィン?」 と、外の景色を見ながら千秋がボソッと聞いて来た。 「あ、どうだった?」 「美味かったからどこのマフィンか聞いてるんだよ」 美味しかったのか。 素直な感想が聞けて嬉しくなって、思わず目を細め微笑んでしまう。 自信作ではあったけど、口に合ったみたいで良かった。 「あれね、僕が作った」 「……え? お前が作った?」 「うん。千秋に食べさせたくて作った」 僕の手作りだと知ると心底驚いたような顔をした千秋の顔はまた新鮮で面白い。 その後も色々と考えているのか、ぐるぐると百面相のように表情が変わっていく。 ……やっぱ、かわいいな。 もっと近くで見たくなったので向かいの席に座っていた僕は千秋の方に移り、そっと肩を抱き寄せようとするもその手を振り払われてしまう。 「なんだよ、こっち来んなよ」 相変わらずツンケンした千秋の隣に座りそっと前髪に触れた。 その柔らかい髪に触れると、なぜか千秋の体がビクッとしなる。 意外にも緊張していたりするわけ? ますます可愛い。早く僕のものにしたい。 さて、どうやって口説けば千秋は僕のになってくれるのかな。 「美味しいって言ってくれて嬉しいよ」 そう言って微笑むと千秋の顔がだんだん紅くなっていってく気がした。 少しは意識してくれていると確信した僕は、そのまま微笑んで千秋に前にした質問をもう一度してみることにした。 「ねぇ、試してみる気になった?」 「何をだよ」 「男と女を比べてみるって話」 「ぶっ!!」 千秋は驚いて噴出してしまったが、すぐに不機嫌そうな顔をして反論してくる。 「くらべねぇって何度言ったらわかるんだよ」 「ま、千秋は女のナカも知らないか」 わざと挑発させるように言うとまた千秋が僕のことを睨み返した。 「う、うるせーよ」 するとまた千秋は何か色々と考えているのか表情がぐるぐると変わっていく。 すぐ挑発に乗るその単純な性格。それを利用しない手はないと思った。 「だったら賭けをしないか?」 僕が静かに言い放つと、また眉間にシワを寄せて不機嫌そうにした千秋の視線がこっちを向いた。 「何の賭けだよ」 一生懸命に僕を睨んで牽制してるつもりかもしれないけど、体は強張り身構えているのがわかる。

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