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6.溺れてしまえばいいのに 8

はぁはぁとお互いに荒い息のまま、肩で息をしながら千秋に覆いかぶさった。 腕の中で小さくびくびくと震えてる姿がとても愛おしくて、そのまま軽く抱き締める。 千秋が腕の中にいるだけで嬉しい。 最後に千秋が僕を引き寄せてくれたのは信じられないけど、本当に嬉しかった。 一瞬、心臓が止まってしまうかもって思うくらいドキドキして、その波が今も引かない。 「千秋、好きだよ」 思わず口にすると、千秋は急に我に返って恥ずかしくなったのか僕に背を向けて無理やり布団をかぶってしまった。 さっきとはえらい違いだな、なんて思っていると何やらブツブツと独り言のようなものまで聞こえてくる。 千秋のことだから今は状況整理するのにいっぱいいっぱいになっているのだろう。こういう時の千秋の思考回路はとても面白くて興味深い。 時間よ戻れ! とか言ってたりして。 まさかね。 「さっきから何をブツブツ言ってるの?」 僕が話し掛けると千秋はわかりやすく、ビクッと体を震わせて驚いたようだ。 「え、聞こえてた?」 目を丸くして聞き返す姿にたまらなくなって抱き寄せるとまた千秋が暴れ始める。 本当に往生際が悪い。 「おい、離れろ」 「嫌だね。もう離さない」 「ダルいんだよ。離れろ」 「さっきまで可愛かったのに、すぐに悪態つくんだね。君は」 すると千秋は顔を紅くさせて、僕の腕の中で僕に背中を向けるように体を回転させた。 それでも抱きしめる力を緩めずに、髪にキスをしているとそれすら避けるように暴れる。とても賑やかだ。 「千秋……」 「なんだよ!」 君が素直になれないのは何となくわかったから、僕はもっとストレートに伝えた方がいいのかな。 「僕、嬉しいんだ」 「はぁ? 何がだよ」 平然とした声を出すも耳が真っ赤になっていて、なおも虚勢を張る千秋が面白くて思わずクスクス笑ってしまう。 「千秋って本当にニブいの? 千秋とこうしていられて幸せだって言ってるんだよ」 すると今度は、その赤さが濃くなっていくようで。そんな千秋を見ながらまた笑った。 それにしても今まで感じていたセックスの後の虚無感が全くと言っていいほどなく、心は余すとこなく千秋で満たされている。 やっぱり僕の運命は千秋だったんだと思った。 好きな人とのセックスはこんなにも甘くて、余韻まで甘い。 そして一層、千秋を離したくなくてぎゅっと抱きしめた。 千秋は相変わらずで、なにやらいろいろ考えてはそわそわしているみたいだけど。 僕は君のことがもっと知りたいと思ったんだ。

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