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7.動き出した、朝 3
でもそんなことをしてもしょうがないから、千秋に目線を合わせるようにして真っ直ぐに見つめた。
今だけは素直になって欲しいと願いながら。
「本当に千秋は強情だね。そんなところも嫌いじゃないけど、こういう時は言って欲しい」
「何を俺が好きな前提みたいに言ってんだよ」
まだ君自身は何も気付いていないんだと、わかっていてもガッカリしてしまう。
昨日僕は君に求められたのを確かに感じたのに遠い夢の話のようで切なくて、はぁーっと軽くため息をついた。
そのとき、千秋のポケットに入っていたスマホがメッセージを受信する。
取り出してディスプレイをみた千秋の顔が一瞬にして綻んだから、相手があの子だというのはすぐにわかった。
イライラする。
この期に及んで千秋を利用しようとするあの子にも吐き気がするけど、自分が利用されてるのにもかかわらずにこやかに笑う千秋も気に入らない。
気持ちがフラフラしないように早めに躾をしなければ。例え、少しキツいことを言わなきゃいけないとしても。
「そんなに嬉しいの? 彼女にとって君は僕のおまけなんだよ?」
すると千秋は分かりやすく怒りを露にした。
「おまけだとー!? ふざけんな! ちゃっかりマリエちゃんの弁当食べときながら!」
「弁当? ……あ、昨日のね。あれ、殆ど冷凍食品だったし、おにぎりは固すぎてさ。あんなの食べたかったの?」
「そりゃ、食べたかったに決まってるだろ!」
昨日、僕が作ったオムライスをあんなに美味しそうに食べておきながら、弁当のことをいまだ根に持たれているとは思わなかった。
「僕の方が何倍もおいしいものが作れるんだけど」
「うっ……」
でも言い返せなかったとこを見て、少しだけ満足する。
僕と付き合えばもっと美味しいものを食べさせてあげるのに。
それにしても男を掴むなら胃袋とはよく言ったもんだ。
自分で何もかもしなきゃいけない環境を作ってくれた親や、料理を教えてくれた姉貴に感謝しなくてはいけないな。
ばつが悪そうに俯いた千秋にゆっくりと顔を近づける。
「もう一度聞くよ……千秋は僕が好き? 嫌い?」
すると千秋の眉が下がっていく。
そして何か考えるように目が泳いでるのをみていると、思わず顔がほころんだ。
前なら即答で嫌いだっただろうに。
嫌いってわけじゃないってことは確かみたい。
でも多分ね、千秋は僕のこと好きになるよ。
考えるってことはそういうことだよ。
今はまだわかってないみたいだけどね。
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