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8.嵐の前の静けさ 8
完全に勃ち上がったソレは先走りをにじませ、軽く握って上下に扱けばグチャっと粘着質な音を上げた。
ゆるゆると扱き続けながら目を閉じればいつの間にか、自分の手が千秋の手なんじゃないかって錯覚を起こしてしまう。……いや、これは願望かもしれない。
今まで人に触れられたいなんて思ったこともなかったのに、想像でも千秋が触っていると考えるだけでさらにソレは固くなった。
「…………ッ……」
グチグチとそれを上下に扱くたびに息が上がってくる。
千秋の肌の熱を思い出すだけで胸は高鳴り、さらに奥から込み上げてくるものを感じる。
千秋はやっぱり僕にとって特別な存在だ。
人の体に触れたいと思ったのも千秋が初めてだったが、今はこうやって本能的に触れられることだって求めている。
そしていつの間にか想像するのは千秋との夜のことで、ぐっと千秋の後孔に自身を埋めるとなんとも言えない感覚になったことを思い出していた。
千秋の中は温かかった。
それに絡み付くように柔らかくて、キスをすればその唇も柔らかくて……。
全身、触れられるところすべてが気持ちよくて愛おしくて。
こんな風にネタにされていると知ったら千秋は怒るだろうが、高ぶった体は止めることができず、僕は夢中で自身を激しく擦るように扱いた。
そして千秋が僕を見て微笑んだのを想像すると吐精感が一気に高まってくる。
「……くっ、千秋……」
無意識に名前を呼べばさらに高揚して、頭の中はこれ以上ないくらいに千秋でいっぱいになっていく気がした。
想像の中の千秋はあの夜みたいに色っぽく乱れ、僕の首に手を巻き付けるようにして気持ち良さそうな顔をしながら笑っている。
それだけでも充分にイキそうだったが、想像の中の千秋が不意に僕の名前を呼んだんだ。
『…………修平』
本人からはまだ一度も呼ばれたことのない下の名前を、想像の中の千秋が呼んだ瞬間。
「………ッ…」
ビクビクッと自身を震わせ自分の手の中に精を放った。
「はぁ……」
しばし余韻に浸りつつも徐々に理性が戻ってきて頭は冴えてくる。
でも、手に放たれた自身の白濁はまだ熱を失ってはいなくて。ここに千秋がいない虚しさを感じ、物凄く会いたいと思った。
だから早く、本物の千秋に触れたいと願いながら、もう一度千秋のTシャツにキスをしたんだ。
───…
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