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9.オレンジ色のキミ 5
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
さほど経ってないのかもしれないけど、千秋の目的がわからないままだと数秒すら長い時間に感じてしまう。
行動が読めなくて、この静まり返った時の先に何が待っているのか。不安半分、少し期待もした。
でも、やっぱり不安の方が勝っているかもしれない。
千秋が今、どんな顔をしてそこにいるのかが見えないから僕の鼓動はどくんどくんと次第に音を大きくしていく。
千秋に対してあんなことまでしたくせに、本当の僕は君に対してどこまでも臆病だ。
だから、目を閉じたままじっと千秋の様子を伺っている。少しの気配の動きすら逃さないように。
そんな沈黙を先に行動で破ったのは千秋の方だった。
立ち尽くしていた千秋が数歩、ベッドに近付いたのは何となくわかった。
そして次の瞬間、ベッドが微かに軋み体重がかかる。
千秋が座ったからだろうか?
でも、寝ている人間の横に座るなんてどうしてだろう。
僕が本当に寝ているのか近付いて確かめているのだろうか。
なんて事を考えていた刹那、その思考はまったく役に立たなくなった。
なぜなら……。
…───僕の唇に柔らかい感触が伝わったからだ。
それが千秋の唇だとわかるまでに時間はかからなかったけど、そこからの思考は全くストップしてしまう。
そして代わりに心臓がバクバクと苦しいぐらい拍動する。
その音はまるで耳元で鳴ってるかのように、頭にまで響いた。
その唇は触れただけだ。でも、…………紛れもなく、キスだった。
なぜ、千秋は僕にキスしたんだ?
……僕の想いがやっと伝わったのだろうか。
それとも何か他の理由があるのか。
頭の中にいろんな言葉が連なって溢れるように、その先を求め出す。
その答えが知りたい。
できれば千秋の口から聞きたい。
そんな想いが募ったとき、僕はゆっくりと目を開けた。
……できるだけ、自然に。
せっかく近くにいる千秋が驚いて逃げてしまわないように。
寝起きを装って軽く目を擦ると、あくびをする真似までした。
そして逸る気持ち落ち着けるように努めていると、少し険しい顔になってしまったのかもしれない。
千秋と目が合えば、その瞳は少し揺らいでいるように見えた。
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