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9.オレンジ色のキミ 7

そして赤い顔は更に赤くなり、怒りを通り越したのか目には僅かに涙が浮かんで、その目をぎゅっと閉じればまた大きな声を張り上げた。 「ムカツク。……ムカツク! なんで俺がこんなにムカつかなきゃいけないんだ!? お前のせいなんだぞ。お前のこと考えてると余裕がなくなるんだ。考えたくないのにいつの間にか考えてるのはお前のことで、そんな自分も嫌になる! そんな気持ちがお前にわかるのか!?」 それはまるでただをこねる子供のように見えた。 「……さぁ、どうだろう」 しかし僕がそう告げれば千秋は黙って怒りごと閉じ込めるみたいに拳を握り締め、小さく息をはいたと同時にその顔は寂しげに変化していく。 目はまだ閉じたままだけど、本当に泣いてしまうんじゃないかって思うくらい弱々しくて、小刻みに体を震わせていた。 すると、震えた千秋の唇が声を乗せてほんの少しだけ動いたんだ。 そんな千秋から放たれた声は、さっきとは打って変わってか細い声だった。 その絞り出すような小さな声は僕の心に真っ直ぐ響く。 まるで水面に波紋を広げるようにゆっくりと。 僕はきっとこの先もこの瞬間を忘れられはしない。 「……好きなんだよ、新藤のことが。だから……無視、するな」 ──夢かもしれないと思った。 また僕の都合のいい妄想なんじゃないかって、千秋が目をかたく閉じていることをいいことに自分の皮膚に爪をたてるように握りしめてみれば、……痛かった。 現実なんだと思うと、何ともいえない感情が沸き上がってきて胸が一杯でたまらなくなる。 ドクンドクンと跳ねるように拍動が増していく。 一気に体の至るところに血液が巡っていくみたいに、熱くて。 何故だろう、無性に生きていることを実感したんだ。 愛しくてたまらない。 千秋が好きで好きでたまらない。 そしてその千秋が僕のことを好きだといってくれる。 こんな奇跡、凄い。 今まで冷たくしてごめん。 意地悪してごめん。 これからは、ずっと愛していくから許して。 お願いだから。僕を許して。 目を細めながら千秋の髪に触れた。やっと触れられた喜びで一杯になる。 指が耳を掠めた瞬間にビクッとなったその反動で目をあけた千秋と視線がぶつかった。 弱々しい目をした君に、早くキスしたいと思う。 「────合格」 微笑みながら千秋を抱き寄せて今度は僕が千秋を組み敷いた。 焦った千秋は咄嗟にいつもの調子を取り戻し噛み付くように言い返してくる。 「つか、合格って何が!?」 そんな姿も全部可愛くて顔が綻んでしまうと、千秋がまた顔を赤くしたんだ。

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