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9.オレンジ色のキミ 9
そんな千秋が安心するように、微笑みながら優しく髪をすいた。
「大丈夫。僕は最初から千秋のことしか見てないからさ」
すると千秋はまたムッとした顔を見せて顔を逸らしたけど、僕が彼女とは門を出て最初の角までしか帰らなかったことを言えば不思議そうな顔をして僕のことを見上げた。
「どうして?」
「そういう約束だったから。なんでも彼女ストーカー被害に合ってるらしいよ? だから校門出て最初の角まで一緒に帰って欲しいって言われたんだ」
彼女に頼まれた時のことをそのまま千秋に話せば、ストーカー被害と聞いたからか途端に驚きを見せ表情が一気にシリアスになってしまったから少し笑ってしまった。
まさか本当にストーカーだと思ってるのか?
簡単に信じちゃって、将来騙されやしないかって今から心配なんだけど。
こういうものには何でも裏の理由というのがあるものなのに。
でも千秋にそんな裏の理由なんて気付けるわけもなく。
「ストーカーとかは嘘だろうけどね」
僕がサラッと流すように言うと更に千秋は驚いた顔をした。
「う、嘘!?」
僕にすれば理由は明らかだけど、千秋は訳がわからないと言わんばかりの顔つきだった。
やれやれと思いながら僕は軽く息を吐く。
「だってストーカー被害なのにどうして校門から1つ目の角までなのさ。普通なら自分で解決しようと思わないことだろ? 単に彼女は僕と歩いているところをみんなに見せたいだけなんだよ。ま、僕もわざと千秋に見せたからお互い様かな」
「マ、マジかよ……」
するとまた色々と考えているのか、千秋の表情がぐるぐると変わりはじめる。
何をそんなに考えているのかはわからないけど、そんな百面相の千秋の頬を軽く撫でた。
「もうそんなことしないから安心して。でも、嫉妬する千秋も可愛いからなぁ。誘惑にかられそうだね」
「ば、ばかやろう。可愛いとか言うな」
にっこり笑って言えばまた千秋が頬を赤く染めたので目を細めた。
そして千秋の髪を撫でると、千秋の目が潤んでいる気がしてたまらなくなる。
「千秋……好きだよ」
やっと手に入れられた。
しみじみと実感しながら溢れる想いをのせて千秋の唇に自分のを重ねる。
その柔らかさを感じながら舌を忍ばせれば抵抗することなく受け入れてくれた事にまた感動なんかしてしまった。
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