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1.その笑顔には裏がある 2
「…───と言うことで、今学期の学級委員長は新藤 修平 くんで賛成の人ー!」
帰りのホームルームで学級委員を決めることになり、クラスから拍手が沸き起こると僕は今学期も学級委員長になった。
もう何度目だろうか。学級委員は学期ごとに選出するものだが、おそらく昨年度と同じように今年度もまた一年務めることになるだろう。
多少は面倒くさいと思わなくもないけれど、僕にとって都合のいいことの方が多いと感じていたので務めることは問題ない。
学級委員長は何かと集まりがあったり、面倒な雑用などを押し付けられたりすることもあるので皆んな倦厭しがちだが、何かと便利な“真面目な生徒”を装うのは簡単なことだった。
僕の場合むしろその方が好都合で、教師たちから頼まれる雑用なんかも恩を売っていると思えば造作もなく、教師や友達の親からも簡単に信頼を得ることができ、内申を気にすることなく大概のことは許されてしまう。
この世は要領よく生きなければ損だと思う。
「し、新藤くん……」
名前を呼ばれ帰り支度をしている手を止めて顔を上げてみると、緊張した面もちの女子が目の前に立っていた。
「あ、あの……私、副委員長になった山崎っていうの。よ……よろしくね」
「うん。よろしく」
僕がいつものように柔らかい笑顔を浮かべれば彼女は頬を赤らめて走っていってしまった。
そして視界の端ではその走って行った女子と手を取り合ってはしゃぐ女子たち。
嬉しそうな顔をしてはしゃいでいるようだが、僕の心のこもっていない笑顔の何がそんなに嬉しいのだろうか。
こういった光景を目にするたびに、僕の心は冷めていく。
自分が自然に良い人の仮面を被れるが故に、いつの間にか物事を冷めた目でしか見れないようになってしまったのかもしれない。それは、きっと人も自分と同じように表の顔と裏の顔っていうのを使い分けていると思うからだ。
だから僕は、僕に対してにこやかに近付いてくる人なんて信用しない。
僕に近付いてくるのは見た目が良いからか、評判が良いからか。メリットは何なのか。
いつもそんなことばかり考えてしまう。
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