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1.その笑顔には裏がある 4

本気で親の仕事がなくなればいいと思ったわけではない。 友達にからかわれたから。それが悔しくて口走ってしまったが、結果的に姉貴を傷つけてしまったかもしれないと思い反省したのを覚えてる。 忙しい親と過ごす時間は少なかったかもしれないが、僕は両親は立派だと思っていた。 帰りは深夜になることも多かっただろうに、テーブルの上に置いていた授業で描いた絵やテストの結果など、僕が見てほしいものをいつもちゃんと見てくれて「よくできました」と感想を書いたメモを置いといてくれる。 そして、たまの休みには思いっきり遊んでくれた。 形は違えど親子のコミュニケーションはとれていた。 今から思えば仕事で疲れていただろうに、本当に良い親なのだ。 一般的な家庭からすれば僕らの家族は普通ではなく寂しそうに思えるのかもしれないが、僕にとってはそれが最初から普通で満足もしていた。 確かに帰っても友達のお母さんのように出迎えてはくれないが、面倒見の良い姉貴は僕が帰る頃には出来るだけ家にいたし、出掛けるときも僕を連れて出ていた。 今から思えば姉たちがままごとして遊んでいる横で本を読んでいるなんて変だけど寂しさを感じることは少なかったように思う。 僕自身はささやかながら幸せを感じていたんだ。 だからこそある時期から、同情に敏感になった。 寂しくなかったと言っているのに、自分の勝手な思い込みで僕を慰めようとする言葉が僕には違和感があって、相手の好意はありがたいと思うけど、何も知らない人に言われるのが気に入らない。 姉貴にそれを言うと「気にかけてくれてるのに失礼だ」と殴られた。 姉貴は僕よりもっと大人なんだ。 そして、同情やお節介、噂話にさえ気にかけてくれてありがたいと思える人なのだ。 親の留守にまだ小さい弟の世話をしなきゃいけないから人より早く大人にならなきゃいけなかったんだと思う。 そんな姉貴を見ていたからだろうか。 僕自身も同年代の友達に比べれば早く大人になったのかもしれない。 ただ僕の場合は真っ直ぐで熱い姉貴とは違って冷めた方向に大人になってしまったけど。 趣味思考がかなり似通った姉弟だが、そこだけは唯一違った部分かもしれない。
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