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1.その笑顔には裏がある 5
どうして似た者姉弟なのに僕だけこうなったのか……。
姉貴がなにに対しても好意的だから自己主張をするために無意識的に変わったのか、元々僕には暖かい心なんてなかったのか。
多分、後者だと思う。
僕はそんなに優しい人間ではないと思うから。
何でも冷めた目でしか見られないし、姉貴が何も考えずに有り難く受け入れられる同情やお節介や噂話なんかにも勝手に理由付けをしてしまう。
同情するのは可哀想だから。
お節介を焼くのは寂しそうだから。
噂話をするのは他人が自分よりも不幸であれば安心するから。
自分でもひねくれていると思うが、幼いときに抱いた疑問はそんな風に僕の中で答えをだしていた。
この世に見返りなく物事は成り立たないと思っている。
みんな笑顔の仮面の下でしたたかに損得を考え、絶対に自分は損をしないように行動してるのだ。
小学校の低学年のころ仲良かったみっくんは学年が上がるにつれて宿題がわからないときだけ僕のところに来るようになった。
そして中学生になる頃には疎遠になっていたのに、僕が女子に人気があると知ればまた仲良くしようとしてきた。
まぁ、これは彼に限ったことではなく僕の周りにはそういう人が多く近づいて来た。
みんな打算的で残酷な本性を笑顔で隠したつもりになっている。全く隠せてもいないのにあわよくば利用してやろうと考えて近づいてくる不自然な笑顔にもうんざりした。
馬鹿馬鹿しい。
きっとこれを姉貴に言うとまた殴られそうだから言わないけど。
そうやって来るならばと……。
その頃から僕も笑顔の仮面を被るようになったのかもしれない。
……ま、くだらないことを考えるのはやめて帰ろうと思っていたらスマホがメッセージを受信した。
相手は少し前に知り合った女子大生で、放課後に会いたいというものだった。
会いたいというよりヤリたいんじゃないのか? なんて思いながら場所を尋ねると、駅の裏にあるホテルを指定してきた。
やっぱりヤリたい方だったなとうんざりもしたが、僕もそろそろ溜まってきていたしちょうどいい。
だから、別に構わないと返信して 僕は教室を後にした。
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