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第2章 少し馬鹿な天邪鬼 1
同じクラスに柏木 千秋 という奴がいる。
みんなが僕に媚びる中、柏木だけは面白いくらい僕に反抗してみせた。
柏木とは一年の時も同じクラスだったんだが、些細なことを指摘するといつも反対の行動を起こすような奴で、僕が喋りかけると不機嫌になるし、何故かいつも僕のことを睨みつけている。
それに結構な天の邪鬼のようで、しかもそれがことごとく裏目に出ているのにとにかく学習しない変な奴。
多分、馬鹿なんだと思う。
一年の時、体育の授業の後で着替え終わった柏木のシャツの裾がズボンからはみ出ていたから「シャツが出てるよ」と教えてあげたことがあった。
すると一瞬ハッとした顔をした柏木だったが途端にムッとして眉間にしわを寄せたかと思うと。
「わ、わざと出してるんだよ! オ、オシャレってやつだ!」
裾が出てたことに気付かなかったのが恥ずかしかったのか、それとも僕に指摘されたのが気に入らなかったのか、顔を赤くしながらもお洒落だと言い張る柏木に可笑しな奴だと思い笑いながら言葉を返す。
「へぇ、さりげなさ過ぎてわからなかったよ。ごめんね」
変なやつだと思いながら僕も着替えて教室から出て行くと、今度は僕のことを追いかけてきて僕の正面に立ちはだかった。
そして少し出ていたシャツをズボンの中に入れるわけでもなく全部ズボンの外に出すと。
「これで文句ないだろ!」と、鼻息を荒くして僕を睨みながら意気揚々と歩いていった。
文句も何もはじめからなかったけど、柏木の勝ち誇った顔を見て笑いを堪えることが大変だったことを覚えてる。根拠のないあのドヤ顔はすごくおかしかった。
それと同時に、本当に柏木って馬鹿だよなって思ったんだ。
生徒指導の先生は服装の乱れにうるさいタイプだったので、見つかると注意に無駄な時間をさかれて面倒なだけなのに、わざとシャツを出して歩いていく後ろ姿を見て呆れたものだ。
後で案の定、生徒指導の先生にこっぴどく叱られているのを見て、ついつい笑ってしまったけど。
ほら、やっぱりな。って。
……あの時は、本当に笑いを堪えるのが大変だった。
横を通り過ぎた時に柏木と目が合ったんだけど、僕がニヤリと笑ったら柏木はまた不機嫌そうな顔になりそれが先生には反抗的な態度に取られたらしく小言はいつまでも続いていたっけ。
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