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第55話

 千紘はまわされた腕の所からじんじんと熱が伝わってきてそこからだんだんと広がっていくのを感じていた。  「神津先輩、離して下さい。」  千紘はそう言って腕から抜け出そうと体を捩った。しかし、神津のがっしりとした腕に閉じ込められて逃げることができない。そうこうしているうちにも体はどんどんと熱を帯びていき頭も熱に浮かされていく。このまままた、流されて抱かれていいのだろうか?少し前の僕なら迷わずに流されていただろう。でも、今は須藤という関係を継続している人間がいる。    段々と考える事ができなくなってくる。そして千紘が体の力をぬいた瞬間、神津は千紘の体を抱き込んで押し倒した。甘い香りが漂ってくる。千紘は心も体も甘く蕩ける様な海に流されるようにだだ、快楽だけを追いかけていた。  神津もまた、千紘の体から発せられる甘いミルクの様な香りに引き寄せられて千紘の体をひたすら貪るように攻め立てた。しかし理性と快楽の間を漂いながらも項を噛むことだけはしなかった。  そして気を失ってしまった千紘の体をきれいにしてそっとベッドに寝かせた。体中に散らされた赤い花びらを眺めながら神津はこの美しい体も心も自分のものにしたいとあらためて思った。目を離すとすぐにフラフラと飛んでいってしまう蝶のような千紘をどうすればつかまえられるのだろうか……

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