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第61話
翌日、千紘は寝室に差し込む陽の光に目を覚ました。布団を被ったままぼんやりと昨日の事を思い出す。急に恥ずかしくなって頭まで布団をかぶり蹲った。すでに須藤は起きてここにはいない。しかし、日曜日なので仕事は休みのはずだ。おそらくキッチンで朝食の用意をしているのだろう。千紘はどんな顔をして須藤に会えばいいのかわからず目が覚めても布団の中でうだうだと時間をやり過ごしていた。
「千紘君、起きた?」
急に寝室のドアが開いて須藤が入ってきた。千紘はじっと布団の中で息をひそめていた。するとベッドの傍まできた須藤が布団をめくって千紘の頭の横にストンと腰かけた。
「千紘君、朝だよ。ご飯できたから一緒に食べよう。」
千紘はゆっくりと振り向いて須藤の顔を見上げた。そこにはいつもの様に優しく微笑んでいる須藤がいた。
「おはようございます。」
千紘は須藤の目をみて挨拶しいつもと変わらない態度の須藤にほっとした。
今日の朝食は塩鮭を焼いたものにほうれん草の胡麻和え、豆腐のお味噌汁だった。千紘は味噌汁を一口飲みながら須藤に昨日のことを改めて謝りたいと思った。少し俯いた千紘に須藤は
立ち上って千紘の横までくるとくしゃりと髪を撫でた。
「千紘君、こんな嫉妬深い僕でもまだ、付き合ってくれるかな?本当は優しくしたいんだ。千紘君を好きな気持ちも変わらない。どんどん、好きになっている。」
そう言いながら席に戻りまた、食事の続きをしだした。千紘は思いがけない事を言われて言おうと思っていたことも言えずにただ、須藤の方を見ていた。
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