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第63話

 千紘は部屋に戻るとどさりとベッドに倒れ込んだ。やはり気を張っていたのか体は疲れているようで動かすのが億劫だった。天井を見ながらぼんやりとこの週末の須藤とのことを考えていた。須藤は千紘のことが本当に好きだと言っていた。それは千紘が考えている須藤との関係よりもっとちゃんとした関係を持ちたいということだろう。それにちゃんと答えれば須藤とずっと一緒にいることができるかもしれない。でも、千紘はまた、捨てられることの恐怖からなかなか踏み切ることができなかった。  あれこれ考えているうちにいつの間にか寝てしまっていたようで気が付いた時には窓の外は薄暗くなってきていた。ベッドからのっそりと起き上がり食事の前に課題を終わらせておこうと机へとむかうことにした。  七時を過ぎたころやっと課題が終わったので先に夕食を食べるために食堂へと行くことにした。  「千紘、ここ。」  食堂に入ると隆也がすでに食べ始めていて横に座れと呼ばれた。千紘は夕飯の生姜焼きがのったトレーを運びながら隆也のいるテーブルへとついた。  「千紘、今日は遅かったな。」  「課題をやってたんだ。」  「そういや、この週末も出掛けてたのか?」  「うん。友達のところに。」  そう言いながらもぱくぱくと食べ進める隆也はすぐに食べ終わって千紘が食べているのをお茶を飲みながら待っていた。  「もう、課題終わったんなら部屋にいってもいい?退屈なんだよね。」  隆也そう言って千紘が食べ終わって立ち上がると返事も聞かないでそのまま部屋までついてきた。

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