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第34話

 千紘はドアがノックされる音を聞いて椅子から立ち上がった。数歩歩いてドアの前までいくとそこには神津先輩がいた。  「先輩、また、来たんですか……まさか、今日の約束も先輩がキャンセルしてしまったとかいいます?」  千紘はイラついているのを隠さずに神津をにらみつけた。  「もう、そういうことはするな。なんでそんなことをするんだ。とりあえず、部屋に入れてくれ。」  神津はそのまま僕の横を通って勝手に部屋に入ってきた。奥まで行くとベッドに腰かけた。  千紘は黙ったまま神津の前にいた。別に好きで今の状態になったんじゃないのに。なんとなく寂しいから抱いてもらって一緒に朝まで寝てもらう。横に温かさがあると朝まで安心して眠れる。ずるずると繰り返しているうちに誰でもいいから傍にいてほしいと思うようになった。ただ、なんとなく自分の居心地のいい状態を維持してきただけだ。やめたらまた、寂しい夜が繰り返されるだけだ。この人は俺をそんな状態にしてなんの得があるのだろう……  ただ俯いたまた千紘は何も言うことができなかった。この人は恵まれた家庭にアルファとして生まれて全てのものを与えられて育ってきたのかもしれない。僕には何もなかった。そんな人に僕のことをわかれと言っても無理なのかもしれない。  「神津先輩。先輩は僕のことは何も知らないですよね。もう、帰ってください。誰も呼びませんから。」  千紘はそのまま動かずに神津の目をじっと見据えた。

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