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第44話

 車に乗って近くのスーパーに寄った。夕飯の材料とデザートのケーキを買い込んで再び車に乗ると20分程で白く小奇麗なマンションの駐車場へと入っていった。今日は夕ご飯を作ってくれるらしい。甘党の僕のために苺のショートケーキをデザートに買ってくれた。  エレベーターで7階まで上ると廊下をまっすぐ進み一番奥のドアの前で止まった。鞄から鍵を出しドアを開けると須藤さんに促されて僕は中へと足を踏み入れた。  「適当にその辺座ってて。買ってきたもの片付けちゃうから。」  そう言って須藤さんはてきぱきと買ってきた食材を冷蔵庫に入れていく。そして少しするとコーヒーのいい香りがしてきた。  「千紘君はカフェオレがいいんだよね。」  「はい、有難うございます。」  そして僕が腰かけていたソファに来ると横に座った。  「なんだか大人しいね。借りてきた猫みたい。どうぞ、他の部屋も探検していいよ。」  そう言って須藤さんは僕にほほ笑みかけた。  「そう言えば須藤さんってしたの名前なんて言うんですか?」  「あはっ!って、今頃そこ?千紘君、それ普通最初に聞くことだよね。」  須藤さんは笑いながら拓海だよ、って教えてくれた。須藤 拓海。  「少しは僕のこと知りたくなってきたかな?」

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