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甘く優しく 其の二
指先で彼の舌を弄ぶ。その間に世良が口付けたのは、彼の胸板だった。舌を這わせば潤滑油となった唾液が彼の胸元の突起物へと絡みつく。軽く先端をつついてやるだけで、汐の体はびくびくと反応した。
「ん、ぁっぁ、……ぃ、っん……ぁ、……」
くちゅくちゅと小さく主張を示し出したそれを左右交互に吸いたてる。なんとなく、彼が何かを訴えようとしている気がしたが、舌を抑えつけてどろりとした唾液を指先で撫で続けていた。
「っ痛。ちょ、汐さん。なんで噛むんっすか……」
顔を上げて、くっきりと歯形がついた指先を放す。
「お前が悪い。名前呼んでんのに。気づけバカ」
「あ。すいません……。えっと、何っすか?」
「……ちんこ。触って」
手首を掴んで促された先にでは、固くなった彼の先端が、既に湿り気を帯びて快楽を待ち構えていた。
「一回出します?」
「ん」
喉を鳴らす甘えたように返事に、世良はゆっくりと体を移動させる。迷わず彼へとしゃぶりつけば、その細い体はびくびくと大きく跳ねた。ねっとりとした唾液は、想像以上の快楽を彼に与えられているようだ。ぐちゅぐちゅと音を立てながら彼を嬲り、絶頂を促す様に根本を指先で扱いた。
ただ不味いだけだった潤滑油の中に、彼の先走った味がじんわりと広がっていく。
「ゃっ、も、ぅ、っんっ……イ、くっ……やっ、ぁっ……!」
絶頂の兆しが見えたところで、口を放して掌で包んだ彼を刺激した。ぴくんと跳ねた彼が白濁を散らしたのはそれがからすぐの事だ。彼は薄い胸板を大きく揺らしている。
「お前……、その顔で平然とフェラすんの……、ずるいだろ、マジで……」
「俺、怒られてます?」
「褒めてんの。……さっさと次いって」
「っす」
唾液を絡ませた指先を割れ目に這わせる。閉じられた後方を開く事に少々戸惑いはあったものの、早く、と急かされてしまっては覚悟を決めざるを得ない。汐はすでに、自分を受け入れる覚悟をしてくれているのだから。
まずは一本。伺うようにゆっくりと押し込む。
「痛くねぇっすか?」
「なんか、気持ち悪い。変な感じ」
彼の体内に潤滑油を練り込むように指先を動かした。
彼の顔色を見ながら指先で肉壁を押し広げる作業はなかなか時間がかかる。
「二本目、入れるっすよ」
言いながら指を滑り込ませた時、あからさまに彼の体が強張った。
「痛い、っすよね……?」
「良いから、続けて。はやく」
世良は彼の中に指先を押し込んだまま、すっかりと萎えてしまった雄に舌を這わせた。びくんと体が跳ねると同時に、強く世良を締め付ける。
「気持ち良いっすか?」
「いや、ちょ、今は触んないでっ。イッたばっかなんだから、っ……んっぁ、」
あからさまに善がる彼を視界に映した世良は、雄に付着していた精液を舐めとりながら愛撫する。徐々に起ちあがり、再び固さを取り戻したそれを口に含んだ。やだやだ、と与えられる快楽に身を捩る汐。その間に、彼は三本目の指先を飲み込んで肉壁をうねらせている。
「だか、らっ……触んな、くてっ良、ぁ、ぁゃ、っ……っ!」
二度目は世良の口の中で放たれた。先程よりも随分と量が少なく味も薄い。後方から指先を引き抜けば、すっかり広がった入口に潤滑油が馴染み、ぞわりと世良の欲を掻き立たせた。一方で、汐は気力を失ってしまったかのようにぐったりと四肢を投げ出している。
「汐さん、大丈夫っすか? 入れて良いっすか?」
「……お好きに、どーぞ」
息も絶え絶えである彼の体を気遣うも、反り立った欲は止められない。
腰を近づけ、先端を彼に含ませた時、悲痛とも取れる小さな悲鳴が聞こえて来た。
「痛い、っすか?」
「……世良」
「っす」
名を呼ばれ、先だけで彼の体内を感じながら体を折る。早く最奥を穿ちたいのは山々なのだけれど、汐に無理はさせられないと強く思うから。
世良は、彼の顔横に肘を置いて、その涙が滲む瞳を見下ろした。
「お前に、傷……、つけたい」
「傷?」
「そ。……同人誌みたいで、興奮する」
彼が何に興奮しているのかは分からないが、背中に回った細い腕が世良の肌をゆっくりと摩った。
「入れて良いよ。奥まで。このまま」
「……っす」
みちみちと、自身が彼を押し広げているのが分かる。目下の綺麗な男が、汗を滲ませながら、その痛みに耐えてくれているのであろうことも。そんな時、背中に走った痛みに、世良は思わず動きを止めてしまう。
「……世っ、ぁ、ぃっ、痛っ……ぃ、っ」
全身を強張らせた彼は、耐えかねた痛みを逃すように、世良の背中へと爪を立てたのだ。背中を痺れさすような痛みは、彼が自分を受け入れてくれている証。それを世良の体に刻む事が、彼の興奮を煽っている事を悟れば、この上ない幸福が胸中をひしめいた。
「今、すげー幸せっす。俺」
「そりゃ……、良かった」
両手を伸ばしてくる彼を抱き上げ、膝の上に座らせる。どちらからもなく触れ合った唇。深い口付けを施す間にも、彼は肌に挟まった雄を震わせていた。
「お前のせいで、色々止まんないんだけど……」
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