13 / 18

13 異変

その時だった。 ふと燃料の残量を示す計器を見た隼人は、目を見張った。 「え…どうして…」 燃料の残量は、目的地点までの必要量の三分の一にも満たなかった。 もしかして燃料漏れかと思って確かめたが、異常はない。 つまり、もとからタンクに入っている量が大幅に少なかったということだ。 おかしい。整備班が何重にも確認の上整備したはずだし、自分でも今朝この目で確認していた。 きちんと補給されていたはずだし、漏れてもいない。 ということは、つまり。 「…燃料が、抜かれた…?」 信じられないが、それしか考えられない。 誰が、なんのために、そんなことを。 分からないが、とにかく、このままでは敵地まで辿り着くことなど到底不可能だ。 慌てて無線に向かって現状を報告する。 すると、先頭を行く隊長から、『仕方がない、引き返せ』と返答が来た。 その瞬間、頭が真っ白になる。 嫌だ。俺だけ引き返すなんて…。 死を覚悟して、この仲間達と往くのだと心に決めていたのに、自分だけが一緒に行けないなんて、絶対に嫌だった。 それに、死にに行ったというのに、のこのこ戻るなんて、生き恥この上ない。どの面下げてそんなことができるのか。 「…嫌です、俺も行きます」 『無理だろう、諦めろ』 「ですが、しかし…」 『また機会があるはずだ。次に出撃命令が出た時に万全の態勢で行けばいい』 隊長はあっさりとそう言うが、隼人はどうしても納得できない。

ともだちにシェアしよう!