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12 運命の朝

* 整備を終えた特攻機の操縦席に乗り込む。 滑走路に縦一列に並ぶ特攻機。隼人の前には栄司が乗る機体があった。 ゆっくりと瞬きをする。未練は――ないと言ったら嘘になる。残してきた家族の行く先がひどく心残りだ。 でも、覚悟は決まった。今から死にに往く。自分の人生にはもう未練はない。 唇を引き締め、操縦棹を握りしめる。顔をあげ、ぐっと顎を引いて前を向いた。 栄司の背中。 お前がいるから、お前と一緒だから、俺はもう何も雑念などなく、任務を完遂することに全てを捧げられる。 先頭の特攻機が動き出し、次々と続いていく。栄司を追うように隼人も機体を進めた。 滑走路の沿道には、特攻隊員たちの見送りに来ている近所の住民が一列に並び、声をあげながら日の丸を振っている。 エンジン音がうるさいので何を言っているのかは分からないが、必死に手を振りながら何か叫んでいる小さい女の子がいて、隼人は妹を思いながら手を振り返した。 スピードをあげ、先頭機が離陸した。栄司の特攻機もそれに続く。 さあ、出発だ。もう後戻りはできない。するつもりもない。 隼人の機体もふわりと浮かびあがった。ぐんっと重力がかかる。 最後尾の特攻機が無事に離陸すると、上空で全機一列になった。あっという間に眼下の基地が遠ざかっていく。 数時間後には目的地の上空に着き、一斉に敵軍へと突入して機体もろともに爆死する予定だった。

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