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14 微笑み
「…俺も行かせてください」
『その残量では無理だ。途中で燃料切れになって墜ちるぞ』
「ですが、皆と一緒に行きたいんです。行かせてください…!」
皆と言った中には、もちろん栄司が入っている。
栄司と一緒に行きたい。栄司と一緒に死ねるのなら本望だと、そう思っていたのだ。俺だけ生き延びるなんて嫌だ。
後から追いかけるなんて足りない。一緒に死んで、同じ海に沈みたいのだ。
そう思いながら、隼人は斜め前を飛ぶ特攻機を見た。栄司の姿…その瞬間、彼がちらりとこちらを見た。
静かな眼差し。そして、その表情は…。
誰もが栄司は無表情で何を考えているか分からないと言うが、幼い頃から共に過ごしてきた隼人は、彼の表情を読み取ることができたし、その気持ちがいつも手にとるように分かった。
今……栄司は、微かだが確かに――笑っている。隼人を見て、穏やかに優しく微笑んでいる。
お前か、と隼人は思った。燃料の計器に目を落とす。お前がやったのか。
一体なぜ、何のために…。
『――戻れ、香坂』
栄司の声が無線から届いた。隼人は目をあげて前方を見ながら首を横に振り、嫌だ俺も行く、と答える。
『馬鹿か、無駄死にする気か』
「嫌だ、お前と一緒に…」
『戻れよ…隼人』
他の皆も二人の会話を聞いているはずだが、何も言わずに黙ってくれていた。
もしかしたら何か気づかれているのかもしれないと思ったが、もうそんなことはどうでもよかった。世界中に向かって、俺は栄司が好きだと、栄司と一緒に死にたいのだと、叫びたいくらいだった。
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