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17 愛している
前を見ると、栄司が少し顔を傾けていて、鏡越しにこちらの様子を窺っているのが分かった。
―分かったよ、栄司。お前の言う通りにする。
隼人を生かそうとした栄司の気持ちを、無駄にするわけにはいかなかった。
「…っ」
隼人は唇を噛んでぎゅっと目をつむり、すぐに大きく見開いた。
「…うああぁー!」
隼人は雄叫びと共に操縦棹を思いきり左にひねり、急旋回した。
仲間たちの機影がぐんぐん遠ざかっていく。いつも近くにいた栄司が、手の届かない場所へと離れていく。
「…くっ、う…」
涙が噴き出した。嗚咽が抑えられない。
視界が滲んだが、なんとか目を見開いて前だけを見つめる。誰もいない前方だけを。
《さようなら、隼人》
無線機から栄司の声が聞こえてきた。
《…愛している》
最後にそう彼は呟いた。とてつもなく優しい声だった。
もう我慢できなかった。泣き叫びながら、隼人はひとり帰途につく。
ありがとう、ありがとう。愛している、愛している、愛している。
心の中で何度も何度も叫んでいた。
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