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4 運命

「大丈夫だ」 隼人は笑って鳴瀬に向かって深く頷く。心配させたくなかった。家族のことや将来のことを思って気持ちが後ろ向きになっていることなど知られてはいけない。 特攻の志願者を募られた時、正直なところ、嫌だと思った。無理だと思った。 軍に入ったからには戦死する可能性も覚悟してはいたが、確実に死ぬしかない特攻なんて…と。 『志願』とはいえ事実上『強制』だ。上官から特攻という言葉が出たと同時に運命は決まっていた。全員が手を挙げるしかなく、そうしなければどうなるか明らかだった。 しかし、仲間から恥さらしと罵られて上官から殴られるかもしれないが、志願しないという選択肢もあった。どうしても嫌だと逃げ出すことも出来ないわけではない。 でもそうしなかったのは―鳴瀬がいたからだ。 彼は真っ先に手を挙げていた。挙げるしかないと分かっていたのだろうし、その責任感と正義感の強さでは逃げることなど出来はしなかったのだろう。 だから、隼人も手を挙げた。鳴瀬を一人で逝かせるわけにはいかなかった。二人同時に召集された瞬間から隼人は、死ぬときは一緒だと心に決めていた。物心ついた頃から隣にいたのだ。離れ離れになるなんて想像すらできない。

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