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第5話 運命の日ー夜sideー

召集なんかされたくない。 されなければ、ずっと幸せでいられたはずだった。  終わりのこない幸せなんてなんてなくて、いつか終わりがくる幸せしかないんだって、この身を持ってまさか知ることになるとは思っていなかった。知らない方が良い気持ちなんてないけれど、恋心を知ってしまったら愛してしまった人と離れるなんて出来やしないんだって、そう思っていてもいつかは離れなくちゃいけない。 そのいつかは意外と早く来てしまった。 今日ついに運命の紙が届いてしまったから。 ー篠倉夜殿ー 上記の者を第一部隊所属とし、3月21日召集もする。 その紙を見た日は、最悪にも晴れていて少し位曇っていたら良かったのになんて思った。 だって、ズタズタな俺の心には晴れよりも雷雨の様だったんだから。 どう秀に伝えるべきなのかも、どうやって離れることを言えば良いのかも、いざそういう時になると、何を言って良いのかわからなかった。 でも、一番は俺が悲しむよりも、普通に伝えるべきだと思って、いつも通り秀の家に行った。 「秀いるか?」 「いるけどどうしたの?」 「実は召集の紙がきたんだ。」 「嘘だよね?お願い。嘘って言ってよ。」 「俺も悲しいけれど、本当なんだ。 明日俺は召集される。」 「何で秀が行かなくちゃいけないの?」 「しょうがないんだ。年齢が違っていたとしたら、幸せでいられたかもしれない。でも、運命は決まっているからねじ曲げることも出来ない。だから例え俺が死んだとしても生き続けろ。お願い。」 「違う時代だったら良かったのに。 好きだよ夜。出会ったあの日から今まで嫌いになったことなんてないから。 好き。大好き。愛してる。良い足りないよ。 離れたくない。」 「俺も離れたくない。大好き。愛してるよ。」 愛してるの言葉なんて良い足りないよ俺だって。好きな人と離れたくないし、置いていって死にたくもない。我が儘だな。 死ぬのが立派だなんて言うけれど、死ぬことは立派なもんじゃない。 人、誰かが死ぬたびに悲しむ人がいるんだから。どんなに憎まれている人にだって悲しむ人はいる。俺も死にたくない。 だけれど、生きて帰ってきた人なんていない。 きっと、俺も骨なんか見つからないんだろうな。 だったら、何か残して死んでいきたい。 最後だと想うから、もう一度伝えたい。 好き。愛してるよ。

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